体育祭準備A
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かったわ。遅い方がどれほど大変な思いをしているのかが。沢田君、あなたは私に小野寺さんの気持ちをわからせる為にやったんでしょ?」
何かを悟った様な堀北さん。
俺はそんな堀北さんにはっきりと告げた。
「違うよ?」
「……え?」
キョトンとしてる堀北さんに、俺は言葉を続けた。
「小野寺さんの気持ちもそうなんだけど、俺が味わって欲しかったのは1回目の方だよ!」
「1回目?」
「そう! 1回目、走っててどんな気持ちになった?」
質問の答えを、堀北さんは目を瞑って考える。
「……すごく走りやすかったわ。なんというか……どこまでも走って行けそうな」
「うん。でもそれはね、俺が堀北さんのスピードに頑張ってついて行ったから感じたんじゃないよ」
「え?」
「俺が走りながら考えていたのは、どうすれば堀北さんが気持ちよく走れるかなって事」
「……」
思っても見なかった答えだったから、堀北さんは驚いた顔になっていた。
「君の事を考えていたから、お互いに全力を出して走り切れたんじゃないかな」
「そうかもしれないわね」
「うん。逆に2回目は、お互いに自分の事しか考えてなかったでしょ? だからあんなに走りづらいんだよ」
堀北さんに分かって欲しいのは、二人三脚は相手の事を第一に考えるべきって事だ。
そして、それが必ず勝利に繋がるはずだ。
「堀北さん、1回目と2回目。どっちが速かったと思う?」
「え? それは2回目でしょう。沢田君の方が速かったもの」
「ううん。それがそうでもないんだよ」
「どういう事?」
「……綾小路君!」
タイムを測ってくれた綾小路君からストップウォッチを受け取り、液晶部分を堀北さんに見せる。
「右が2回目だよ」
「……えっ!?」
堀北さんは驚いた。2回目より1回目の方が3秒も速かったからだ。
「ど、どうして?」
「片方が速くたって意味はないんだ。二人三脚はペアで挑む競技。ペアの信頼関係が結果に絶大な影響を及ぼすんだと思う」
「ペアの信頼関係……」
「そう。だから、まずはペアの事をよく考えてみてほしいんだ。今の堀北さんなら小野寺さんだね」
「小野寺さんの事……」
「そうさ。元々足の速い2人のぺアだよ? そんな2人がペアとしてお互いを尊重しあえたら、どのクラスにも負けないさ!」
「!」
そして堀北さんは、芝から立ち上がって俺の事を見つめた。
「沢田君……ありがとう」
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