夏休み最後の5日間SS、そのA
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…
「……え?」
「……こういう事なのよ」
なんと堀北さんの右手は、赤い小さな水筒にすっぽり突っ込まれていたのだ。
「……」
「……」
2人の間に気まずい沈黙が訪れる。
「……え〜と、何でそうなったの?」
「水筒を洗っていたのよ。底の方にお茶の葉が張り付いていたから、手で剥がそうとしたのだけど……」
「……抜けなくなってしまったと」
「……ええ」
堀北さんの顔がさらに赤くなる。恥ずかしいのだろう。
俺的には堀北さんも凡ミスするんだなって分かって少し嬉しいんだけど、それを言う必要はない。
「……1人で抜けなくて俺を呼んだんだね?」
「ええ。左手で右手を動かない様に抑えるから、沢田君は水筒を引っ張ってほしいの」
「よし、わかったよ」
さっそく堀北さんの隣に行き、右手が嵌っている水筒をがっしりと掴む。
「じゃあ引っ張るね?」
「ええ」
「せ〜の! ん〜っ!」
力を込めて引っ張ると、堀北さんの顔が苦痛で歪んだ。
「……痛っ」
しかし、水筒はピクリとも動かない、手首の前の一番幅が広い所が釣り針の返しの様になってしまっているのかもしれない。
しばらくひっぱり続けるも、結局水筒を動かす事は出来なかった。
「これはもう、石鹸で滑りを良くして抜き取るしかないね」
「……そうね。でも間の悪い事に、今は断水中よ」
そういえばそうだった。うっかり忘れてしまっていた。
「あ、そうだったぁ……この部屋に飲料水とかは?」
「ないわ。飲み物も切らしているのよ」
「そっかぁ……じゃあどうしよう」
「食堂かショッピングモールに水を取りに行くのは避けたいわ」
「ああ、まぁそうだよね」
今の自分を誰かに見られたくないんだろうな。
俺に助けを求めたのも、きっと苦渋の決断だっただろうし。
(ん〜ならどうするか。俺が1人で水を貰いに……あ!)
その時、ふいに先程のリボーンとの会話を思い出した。
(そういえば、リボーンが水の備蓄をしているって言ってたな。それを1本もらってくればいいんだ)
問題は1本1万ポイントする所だけど、堀北さんをこのままにする事もできないしな。
これは必要経費だと割り切るしかない。
「堀北さん、俺の部屋に水のペットボトルがあったのを思い出したよ。今から取ってくるからちょっと待ってて?」
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