第百一話 残暑を感じてその十一
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「それで失恋を忘れられ乗り越えられるなら」
「いいですか」
「時には自棄酒も必要です」
速水は達観した目で語った、やはり左目は見えないが右目がそうなっているのでそれでわかることだった。
「辛いこと悲しいことを忘れるには」
「それならですか」
「そうです、そして洗い落とす様にです」
「失恋を忘れて」
「乗り越えることです」
「自棄酒もその為には必要ですか」
「実際それで乗り越えた人も見ています」
そうだというのだ。
「むしろ二度と立ち直れなくなったりするより」
「自棄酒を飲む方がですか」
「いいです」
「そうなんですね」
「ですから」
「失恋したらですか」
「何でしたらボトルを何本か差し上げます」
速水は今度は微笑んで述べた。
「ワインでもブランデーでも」
「ブランデーですか」
「私は基本こうしたお酒が好きでして」
「ワインとか」
「あとウイスキーも」
「店長さんは洋酒派ですか」
「そうですね、ワインが一番多く」
飲む機会はというのだ。
「蒸留酒もです」
「飲まれて」
「自宅にはボトルが常にです」
「あるんですね」
「ですからその時は」
咲が失恋した時はというのだ。
「何でもです」
「言ってですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「飲まれて下さい」
「そして忘れることですね」
「そうして下さい、大事なのはです」
「失恋はすぐに乗り越えて」
「そして笑わないことです」
この二つだというのだ。
「宜しいですね」
「わかりました」
咲は速水に確かな返事で応えた。
「そうします」
「そういうことで、ただお酒はいいですが」
自棄酒でもだ、速水は話した。
「絶対に駄目なのは」
「お薬ですね」
「覚醒剤等はです」
「何があってもですよね」
「手を出してはいけません」
「失恋をしても」
「麻薬は魔薬です」
速水はこうも言った。
「まさにです」
「身体も心もぼろぼろにする」
「恐ろしい薬です、実はキリスト教の悪魔は絶対の悪かどうか言い切れないですが」
神を絶対の善としてそれに逆らう者が悪なら悪魔は悪となるがだ。
「麻薬はです」
「悪ですね」
「あれ程恐ろしいものはないので」
だからだというのだ。
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