第百一話 残暑を感じてその八
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「叩かれても生き残り這い上がった犬はです」
「お水からですね」
その落ちたとだ、咲も言った。
「そうしたなら」
「その時に叩いた相手を覚えていて」
「憎みますね」
「そうなるのが当然です」
「復讐鬼に憎まれますね」
「そういうことです」
「今お話している通りに」
「かちかち山の兎は背中を狙いました」
薪を拾った時に後ろから火を点けまたその背中に芥子を塗っている。
「復讐鬼は相手の背中を狙うものです」
「卑怯って言われても」
「卑怯は憎しみの前では正当化されます」
「卑怯なことをしても憎しみをぶつけるんですね」
「はい、卑怯卑劣もです」
そう言われる様な所業もというのだ。
「憎しみの前ではです」
「何でもないんですね」
「まさに」
そうしたものになるというのだ。
「最早」
「そうですか」
「背中を撃ってもです」
「平気ですね」
「他にあらゆる卑怯卑劣それに陰湿で残忍と言われる所業も」
「平気でするんですね」
「それが憎しみに囚われた人の行いです」
復讐鬼それのというのだ。
「だから恐ろしいので」
「決して失恋した人は嗤ったり攻撃しないことですね」
「その人が気にしないと言っても目を見て下さい」
「その人の目を」
「憎しみが宿っています」
「それで背中をですか」
「狙ってきます、そして復讐鬼の末路は」
「いいものじゃないですよね」
「あの童話の狸は許されないことをしました」
このことは事実だというのだ。
「その報いは受けましたが」
「兎の行いは遥かに酷いですからね」
「あの様な所業をした兎はです」
まさにというのだ。
「何処かで、です」
「報いを受けるんですね」
「そうなります、復讐鬼の末路は一つです」
「因果応報ですか」
「例えその憎しみに正統な理由があっても」
それを持って当然の様なというのだ。
「許されない行いをすれば」
「相手があの狸みたいな人でも」
「はい、周りの人は兎を見てどう思うか」
「私達が今お話しているみたいにですね」
「何と酷いと思う筈です」
まさにというのだ。
「やはり」
「そうですよね」
「尚太宰の作品ではより酷いです」
「あの作品で狸悪いことしていませんよね」
「はい」
全くとだ、速水は答えた。
「まさにです」
「何もしてなくて」
「ただ兎を好きになっただけです」
「恰好悪くて不細工な中年とされているだけで」
「兎は純粋な美少女で」
「それで好きになって」
「兎にあの様にされます」
原典の兎がしたことをそのままというのだ。
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