雷獣再臨
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さは、正統マシーンであるV2にも食らいつけるスピードで、バックエンジンユニットという追加ブースターを持つゲンガオゾに至ってはまだまだ余裕を見せていた。
『全機、気を抜くなよ』
かれこれ数十分は何事もなく高速飛行を続けていて、いい加減緊張も緩みそろそろ退屈に陥るかというタイミングで、ヤザンは部下達へ忠告を発した。
最初のうちは緩むに任せて、そして間もなく警戒ポイントだという時点でそういう事を言い出してくれるヤザンは、誠に戦いの抑えるべき要所という物を心得ていた。
常に緊張していては弓の弦もすぐに切れる。
適度に緩ませてこそ弦は強く長持ちするのだという事をベテラン指揮官は良く理解していた。
最初の20分ばかりの緩みは、良い意味でウッソとカテジナの緊張を解き、昨夜の疲れを少しばかりとはいえ癒やしてくれていた。
だが、その緩みもヤザンの言葉で消えていく。
緊張を取り戻し、ウッソもシャクティを助けるのだという決意を、改めて強く意識し始めて十数分後。
パイロットとしてのコンセントレーションが高まるタイミングとしてはほぼ理想的なその時に、ウッソらの視界に件のバイク戦艦が映りだしたのだった。
通常の戦艦やMSの速度ならば、条件にもよるが月からサイド2までおよそ3日程の距離。
そこをヤザン隊の3機は、最も遅いシャッコーに速度を合わせて飛んで、それでも尚極短時間で先行していた敵艦隊に追いつけてしまう。
まさに既存のMS戦史の常識を覆す驚異的な速度であった。
『視えた!』
ウッソが叫んだ。
誰よりもその接敵を心待ちにしていたのもあって、その発見にも人一倍敏感であった。
逃げ去ったバイク艦隊の航路を割り出したオイ・ニュングの予想通り、敵艦隊は最短距離をひた進んでいたらしい。
戦艦の航跡が光の線となってパイロット達の目にしっかりと映った。
『伯爵の予測通りか。
全機、速度を一旦落とし可能な限り密集。フォーメーションを維持しろ!』
ヤザンの指示に従って、高速飛行中にも関わらず即座に機体が接触するギリギリまで詰め寄る3機。
だが従いながらもカテジナが率直に疑問を述べた。
『速度を落として密集すると敵の砲撃が来た時に一網打尽にされるんじゃないの?』
『数を誤認させて、出来るならデブリに見せたいという事だ。
小綺麗な隊形のまま突っ込めばMSが来ましたと宣伝するようなもんだ。
それに俺達ならば砲撃が来る前に散開できるからな』
そうだろうカテジナ、と言われれば、砲撃が来る前に勘付いて避けろという無茶な注文も、カテジナの心に妙に浮ついた
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