雷獣再臨
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いつは敵ベスパからMSを何度も奪い、そしてその度にザンスカールに痛撃を食らわせてくるケダモノだ。
「クククク、フッハッハハハッ!裸に剥いてやる!」
超高速で突っ込むようにアドラステアの砲塔に着地し、踏み潰したゲンガオゾの機内で獣が笑っていた。
艦内ブロックのどこに囚われのお姫様がいようとも、ヤザンにとっては幾らでも手の出しようはあるのだ。
追い詰めすぎて敵がシャクティに手を出すという可能性も、この際消している。
シャクティの存在が大事なのはお互い様だが、より重く認識しているのはザンスカールの方に違いないのだから。
「こいつで終わりだ…!」
ゲンガオゾが跳んだ。
呟くヤザンの脳波サンプリングに従って、ゲンガオゾのバックエンジンユニットが高速で巻き戻り、金属の摩擦音と共に背に帰ったバックエンジンユニットが、エネルギーチャージを済ませて敵艦のスラスターを狙い澄ます。
ヤザンに殺す気は無い。
だと言うのに彼の笑顔は闘争心に満ちて、凶悪の一言だ。
この一撃が決まれば敵艦隊の機動力は実質喪失される。
その時だった。
――ヤザンさん!
ウッソが己を呼ぶ声が聞こえた。
「っ!後ろからだと!?」
ゲンガオゾの背後から迫る悪意をウッソの声が教えてくれれば、ヤザンは反射的にゲンガオゾのオートコンバーターをはためかせた。
背面跳びのようにしなったゲンガオゾの背…バックエンジンユニットを擦るように赤い粒子が通り過ぎていく。
「鈴の音は…この艦隊にいなかった!?
艦隊を餌に俺達をおびき寄せたっていうのか!」
回避しつつ遥か遠くの虚空を睨んだヤザンだが、次の瞬間には彼の獰猛な三白眼は見開いて、赤い砲撃のその先を見届けてぎ・ょ・っ・とした。
紅蓮の光矢は真っ直ぐに、バイク型強襲巡洋艦リシテアを貫いたのだった。
(なにィ!?誤射か!?)
猛烈に火を吹き上げ内部から破裂していく敵艦を見て、ヤザンはそういう感想を微かに脳細胞の片隅に浮かべたが、だが違ったと直ぐに彼の理性が間違いを訂正する。
「っ!違う…鈴の音め、誘爆を狙いやがった!」
鈴の音の主…ファラ・グリフォンは、機影すら全く確認できぬ程の遠方からの超ロングレンジの狙撃によって、リシテアのエンジンをピンポイントで狙撃し核融合炉のIフィールドを崩壊させてみせた。
それはまさに神業と言う他無い超絶の技と言えた。
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