獣達の胎動
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議なものを見る。
自室前の扉の前に二人の少年が土下座をするように座り込んでいたのだ。
「…」
それを無視し、土下座の少年二人を跨いでヤザンは己の部屋の扉を開けた。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
「そりゃないでしょ、おっちゃん!」
少年…トマーシュとオデロは急いでヤザンの脚にすがりつく。
「あぁ゛?」
野太い声と共に、ギロッという音が聞こえてきそうな視線が背の高い男から降ってくる。
少年達を軽く睨みながら、ヤザンは敢えて不機嫌そうな声色を強調する。
「何の用だ。
俺は忙しい。特に今は、半端じゃなくなァ。
くだらん用事だったら許さんぞ」
今言ったことは誇張なしに本当の事だった。
体も、本来ならベッドに括り付けられ安静にしていなければならない状態でヤザンは動き回っていて、そして彼の仕事を次々にこなしていた。
まず事務仕事を一手に引き受けてくれていた副隊長、オリファーの離脱は手痛く、全ての書類を ――カテジナに手伝わせながら―― 行っている。
他にも半壊状態のシュラク隊の新しいフォーメーションも考えねばならないし、ミューラ達に任せている機体のチェックもパイロットとして義務である。
MS隊統括としては他の機体も全て見ておきたいし、一見無事に見えるパイロット達の心的ケアもせねばならない。
こうした大被害の後は、ベテランの中にさえPTSDを発症する者もいるのだ。
そしてその中で暇を見つけて、オイ・ニュングと時間を擦り合わせてシャクティ救出作戦の煮詰めもしているし、オリファーなどの一線級パイロットの離脱の補填を含め、今後の大方針の話し合いをしたりもしている。
ミューラ・ミゲルばかりに無理をさせているわけではない。
ヤザン・ゲーブル自身も身を粉にして動き回っていた。
こうして話を聞いてやるだけでも随分心が広い対応だと、ヤザンは自分で自分を褒めてやりたい気分である。
「あの…」
オデロがタレ目に強い意思を宿して何事かを言い出そうとして、
「ダメだ」
言い出す前にヤザンが出鼻を挫いた。
「ぇえ!?」
思わずズッコケそうになるオデロとトマーシュ。
「まだ何も言っていませんけど!?」
トマーシュまで素っ頓狂な声になって抗議したが、ヤザンは冷たいまでに冷静な口調で返した。
「パイロットにしろと、そう言うんだろう?」
「っ!」
少年らは心をずばり当てられて言葉に詰まった。
だ
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