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ヤザン・リガミリティア
獣達の胎動
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ぱなしではない」

 

「そ、そうですね…ゲンガオゾとシャッコーを洗練させるのは私達ですし!

負けてないですよね!」

 

何度も首を縦に振って己を鼓舞するミズホを見て、ミューラも微笑んだ。

こういう風に己を納得させ鼓舞するのは大事なことだった。

ミズホはさっきよりも明るい表情で、手に持つ改修計画書をぱらぱらと捲る。

 

「両機ともこの計画通りで良いんですよね」

 

「ええ。

バイオコンピューターとミノフスキー・コントロールによる遠隔操作は、精度も距離もいまいちだからいらないわ。

ゲンガオゾのバックエンジンユニットは、有線式の準サイコミュに変更で構わない。

レンジは短くなるけど、リレー・ケーブルにそのままサプライ機能を付けてしまえば、遠隔射撃でも無尽蔵にランチャーが使えるし精度もミノフスキー・コントロールより上…インコム方式を使わない手は無いわね。

今の技術水準ならそれができる」

 

リレー・インコムにエネルギーサプライ機能を付ける等、現代技術をもってしても実践出来るのはミューラ・ミゲルなど極限られていているが、その鬼才っぷりは実にさり気ないもので、何も増長した所が無いのは流石と言えた。

 

「それに、どうせヤザンがほぼ専属パイロットになるのだし、あの人はスペシャルと言ってもオールドだから無線式よりは相性が良い筈よ」

 

そうミューラが言えば、ミズホも微笑んでその話題に乗る。

 

「先輩がよく言う、野獣≠チて奴ですね」

 

ミューラ曰く、野獣。

まさに65年前にティターンズのサラ・ザビアロフが評した通りの異名がここでもまかり通っていた。

オールドタイプでありながら、ニュータイプ的な感覚を野生の勘≠ナ持っているという説明不能な理不尽さと、そして靭やかな肉体、鋭く強い風貌etcを全てひっくるめて、野獣。

これ以上ヤザン・ゲーブルという為人を的確に表す言葉は他に無いだろう。

ミズホの軽口に、ミューラも笑いながら頷く。

 

「そう、野獣よ。あの男は。

ニュータイプなんて概念が必要ないくらいに、純粋に強い。生物として強い。

原始的な強さなのよ、彼」

 

「そんな野獣殿のご所望は…フェダーインライフルに海ヘビ…またですか」

 

「扱い慣れた武器が良いと言うのだからそうしてやって。

ゲンガオゾの出力には大分余裕があるし、他にも希望の武器があれば搭載してもいいわよ」

 

「はい。希望とっておきますね。

でも、エアーズ市の研究所がインコムのデータを提供してくれて助かりましたよ。

バックエンジンユニットのインコム化が捗ります」

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