妖獣の爪痕 その2
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追い詰められるからだ。
女王マリアの一人娘など、幾らでも政治的利用が思いつく存在であり、一代にして国家を築いた名宰相フォンセ・カガチならばあらゆる利用を思いつき、そして実行するに違いない。
艦船に人を入れる際、そのメディカルチェックは基本中の基本であり、そして簡単な医療検査でシャクティと、女王マリア、そしてクロノクルとの遺伝的繋がりはバレる。
オイ・ニュングは包帯が巻かれた頭をゆっくり振って、そして大きな息を吐いた。
ウッソを散々に利用しておいて、利用できるモノは何でも利用する伯爵らしくも無く、子供をなるべく闘争に利用したくないだなどと、ヤザンとウッソへの配慮を優先した事が彼女の利用を躊躇わせて、そしてそれが仇になったらしい。
(勝つためならば、汚い大人だなんだと誹りを受けるのも覚悟の上だったはずだ。
地球連邦警察機構マンハンターでそんな事はいくらだって経験してきたというのに…まったく私らしくない)
シャクティがザンスカールの姫で、そしてそれをリガ・ミリティアが保護しているとさっさとマスメディアや政府機関に公表していれば、シャクティの意思を無視して幾らでもストーリーなど捏造出来る。
実際、かつてオイ・ニュングは地球不法居住者を摘発する為に何度でっち上げのカバーストーリーを用意してやったかしれない。
オイ・ニュングの得意分野と言えた。
悪逆非道のザンスカール帝国のギロチンが嫌になって、リガ・ミリティアに保護を求めたとか、民衆が喜びそうな美談を創るなど簡単な事だ。
(そして、逃げた姫とそれを守る幼馴染の少年騎士…実に分かりやすくロマンチックな物語だ)
それをすれば、確実にウッソとシャクティは一躍時の人となって世界中に顔も名前も知れ渡る事になるだろう。
そして、そうなったらもう一生脚光を浴び続けるしかない。
その後の人生をゴシップに捧げ続ける事になるが、そうすることで今のリガ・ミリティアが有利に傾き、そしてザンスカールのギロチンを打倒できるならば安い出費。
そうオイ・ニュングは考える。
それぐらいには政治的勝利に貪欲で、そして情け無用になれる策謀家であったし、そうでなければマハの要職など出来はしない。
そういった事を考えつつ、この侮れぬ老紳士は同時に他の思考にも脳細胞を振り分けていたのは、やはり猛威を奮った時代のマハの重役であり、そしてリガ・ミリティアの重要幹部の面目躍如といった所か。
(襲撃から数時間は経ったというのに、連邦政府の対応はやはり鈍い。
未だにどの政府関連のメディア媒体で襲撃の公表すら無いというのは、つまりそういう事か)
リガ・ミリティアでも一二を争う策略家の頭脳
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