妖獣の爪痕 その2
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がくわっと見開かれ、周囲を凝視し、そして整備ハンガーを邪魔だと言わんばかりに手で払えば、オデロとエリシャは崩れていく整備ハンガーに必死にしがみついた。
「エ、エリシャ!」
「オデロ…!」
二人は互いの手をしっかりと結び、そして段々と歪んで倒れる整備ハンガーから逃れようと駆けて、駆けて、駆けた。
壁際のハンガーまでは崩れることなく、何とかそこへ転がり込んだ少年と少女だが、もう二人には何も出来ることはなかった。
転がる際に切ったのだろう頬から血が流れて、そんなものを気にせずオデロは叫ぶ。
「誰か、誰か止めてくれ!そのコンティオはベスパが乗ってんだ!
シャクティが、クロノクルが乗ってるんだ!!」
このような大惨事の中では、子供達も騒動のド真ん中に放り出されるもので、そして皆が必死にあらゆるモノに抗っていた。
しかし、少年の叫びは機動兵器の駆動音に掻き消され、そして尚も崩落が続く基地では誰もがそれを聞く余裕が無かったのだった。
―
――
そういう事が襲撃の中で起きていた。
「なるほど…カテジナが言っていた通り、盛り沢山だな」
ゴッドワルドに負けず劣らずの包帯だらけにされたヤザンが両肩を竦めてやや戯けて見せる。
「…すみません、隊長。
その話をもう少し早く聞けていれば…みすみすコンティオを取り逃がす事も…!」
フランチェスカが実に悔しそうに歯軋りをし、見れば他のパイロット達も同じようなものだった。
だが、あの大混乱の中、必死に未知の戦力相手に戦っていたパイロット達に、突発事故的なコンティオの脱走など止めようもない。
「誰のせいでもない」
それを理解しているヤザンはきっぱりと言った。
皆と同様やはり傷だらけで、松葉杖をつくオイ・ニュングは顔面を空いた手で覆いながら口を開く。
「手酷いな…ここまでとは。これは立て直しに苦労するぞ」
「戦いは勝ち負けと殺し殺されの繰り返しだ。こんな事もあるさ」
オイ・ニュングとヤザンは政戦両面の現場トップだから、深刻な事態に直面しても士気に影響せぬよう、敢えてこのようにさも軽い感じの会話をしたようだった。
決死のオデロが持ち帰ったその報告は、生き残ったリガ・ミリティアの面々を大きく驚愕させ、そして心胆寒からしめて、それは指導者であるオイ・ニュングも実は同じだ。
シャクティが姫であることを最大限利用する前に、帝国に奪還され、そして帝国までがシャクティが姫であると気付いては逆にこちらが
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