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ヤザン・リガミリティア
妖獣の爪痕 その2
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「ダメだよクロノクルくん!ダメだって!!」

 

「スージィ、カルルマンを頼むぞ!

フランダース、ハロ、姉さんを必ず連れ帰ってやるからな!!」

 

身体能力は大の男そのもののクロノクルだ。

スージィの止めるのも間に合わず、脱兎の如くの速さで薄暗い廊下の暗がりに消えていってしまう。

 

「ど、どうするのオデロ!?」

 

ウォレンがあわあわとリーダー格の少年に言うが、もうオデロにだってどうしようもないのだ。

 

「あのバカ!!くそ、追いかけるぞ!!」

 

だがどうしようもなくたって、オデロという少年は一度舎弟分だと認めた者を見捨てる事などできない。

戦災孤児だからこそ、仲間という者を誰よりも大切にする少年であった。

びっこ引きつつも必死になって赤髪長身の弟分を追い、そしてそれをエリシャは支えた。

 

「ウォレン、皆を頼むぞ!

カレル、マルチナ、分かってるな!

皆のためにも勝手な動きはするなよ…特にスージィ!」

 

「わ、わかったよ!」

 

不安そうな気弱な顔でウォレンは頷き、

 

「うー…じゃあ絶対クロノクルくんを連れて帰ってよ!オデロ!」

 

ふくれた頬でスージィも辛うじて頷くのだった。

そこで皆と別れて、何とかオデロは片足で走るようにして格納庫へ向かう。

無論、不自由な片側はエリシャが支え続けながらだ。

 

「す、すまねぇエリシャさん…君まで…その、巻き込んじまってさ」

 

「いいのよ、オデロくんって一人だと危なっかしいし…ちょうどよかったかも」

 

こんな事態だというのにオデロは少し頬を赤くして、胸をときめかせてしまうが、すぐにそんな甘ったれた自分を心で殴りつけるが、実を言えばエリシャも同じだった。

年頃の、しかも日頃好意を見せてくる少年と、こうも密着すれば心臓は高鳴ってしまうが、彼女もオデロと同様、そんな時じゃないだろうとそれを消し去る。

 

「走れるかい、エリシャさん」

 

「やってみる。合わせるから走って!」

 

まるで二人三脚のように二人は必死になって走った。

シャクティと、そしてクロノクルの命がかかっていると思えば、もはやティーンズの異性への気恥ずかしさだなんてのは二人には無い。

暗く、そして揺れる長い廊下を、二人は汗水垂らして走り続けて、そして時折躓きながらもようやく目的地へと着く。

格納庫は既に目ぼしいMSは飛び立った後らしく、まともなMSは1機も無い。

あるのは潰れたガンイージ、ジャベリン、Vガンダム…そして人、人、人。

人の潰れた肉片がそこら中に転がって
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