妖獣の爪痕 その2
[4/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で誰が知る!?
もうザンスカールは彼は死んだものとして全てを動かしている!」
シャクティの顔がその狼狽っぷりを存分に伝える。
自分を姉と慕い、ウッソを兄とも思い、カルルマンを弟とも可愛がる純朴な青年を見殺しになど出来ない。
皆に心で何度も謝り、それでもウッソかヤザンならば、たとえこの男がMSで脱走しても何とかしてくれるかもしれないと、少女は一縷の望みをかけて包帯男を案内する決意を固めた。
「こ、こっちです…」
「よし」
ゴッドワルドは慎重に、慎重に辺りに目配せをし、そしてしっかりとシャクティを人質にしながら歩を進める。
「よし…いい子達だ…そうだ、俺を見逃せば…害は加えん」
ゴリっと銃口がシャクティの頭に押し付けられれば、隙を伺うトマーシュも動けない。
そのまま緊迫した状況が続いて、子供達には為す術もなく睨み合っていると、一際大きな振動が基地を襲って、そして廊下を薄暗く照らしていた非常灯が消えた。
――ガァーンッ
という銃声が響いて、そして皆が咄嗟に身を屈めると、数瞬、辺りは不気味に静まり返る。
ジジ…と電灯が鈍い音をさせて非常灯にまた火が灯った。
「あっ…い、いない!シャクティ!!」
「に、逃げられちゃった!」
子供達が口々に言い、慌てふためくが、その中でトマーシュだけが比較的冷静であった。
「エリシャ、オデロを連れて早くシェルターに!
ウォレン達は、クロノクルさんを頼むよ!」
「トマーシュは!?」
「俺はこの事を他の人に知らせてくる!」
矢継ぎ早に言って駆けていくトマーシュ。
オデロは痛む脚を引きずりながらエリシャに支えられ、口惜しそうに見送るしかない。
「…くそっ」
「今はダメよ、オデロ。脚、結構血がでてる…!」
「分かってるよ!」
分かっているから悔しいのだ。
それはエリシャにも分かる事だった。
「とにかくさ、今は…俺達はちゃんと生き延びる事が先決で…って!?」
スージィに支えられながら起き上がったクロノクルは、頭をぶんぶんと振って霞む思考をクリアにさせると、間髪入れずに一気に走り出したから、オデロもスージィも驚いた。
「クロノクルくん!?」
「おい、クロノクル!!」
走り去る背にかけられる声に振り向かずクロノクルは応える。
「姉さんがさらわれたんだ!
トマーシュばかりに任せてられない!!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ