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ヤザン・リガミリティア
妖獣の爪痕 その2
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で誰が知る!?

もうザンスカールは彼は死んだものとして全てを動かしている!」

 

シャクティの顔がその狼狽っぷりを存分に伝える。

自分を姉と慕い、ウッソを兄とも思い、カルルマンを弟とも可愛がる純朴な青年を見殺しになど出来ない。

皆に心で何度も謝り、それでもウッソかヤザンならば、たとえこの男がMSで脱走しても何とかしてくれるかもしれないと、少女は一縷の望みをかけて包帯男を案内する決意を固めた。

 

「こ、こっちです…」

 

「よし」

 

ゴッドワルドは慎重に、慎重に辺りに目配せをし、そしてしっかりとシャクティを人質にしながら歩を進める。

 

「よし…いい子達だ…そうだ、俺を見逃せば…害は加えん」

 

ゴリっと銃口がシャクティの頭に押し付けられれば、隙を伺うトマーシュも動けない。

そのまま緊迫した状況が続いて、子供達には為す術もなく睨み合っていると、一際大きな振動が基地を襲って、そして廊下を薄暗く照らしていた非常灯が消えた。

 

――ガァーンッ

 

という銃声が響いて、そして皆が咄嗟に身を屈めると、数瞬、辺りは不気味に静まり返る。

ジジ…と電灯が鈍い音をさせて非常灯にまた火が灯った。

 

「あっ…い、いない!シャクティ!!」

 

「に、逃げられちゃった!」

 

子供達が口々に言い、慌てふためくが、その中でトマーシュだけが比較的冷静であった。

 

「エリシャ、オデロを連れて早くシェルターに!

ウォレン達は、クロノクルさんを頼むよ!」

 

「トマーシュは!?」

 

「俺はこの事を他の人に知らせてくる!」

 

矢継ぎ早に言って駆けていくトマーシュ。

オデロは痛む脚を引きずりながらエリシャに支えられ、口惜しそうに見送るしかない。

 

「…くそっ」

 

「今はダメよ、オデロ。脚、結構血がでてる…!」

 

「分かってるよ!」

 

分かっているから悔しいのだ。

それはエリシャにも分かる事だった。

 

「とにかくさ、今は…俺達はちゃんと生き延びる事が先決で…って!?」

 

スージィに支えられながら起き上がったクロノクルは、頭をぶんぶんと振って霞む思考をクリアにさせると、間髪入れずに一気に走り出したから、オデロもスージィも驚いた。

 

「クロノクルくん!?」

 

「おい、クロノクル!!」

 

走り去る背にかけられる声に振り向かずクロノクルは応える。

 

「姉さんがさらわれたんだ!

トマーシュばかりに任せてられない!!」

 

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