妖獣の爪痕 その1
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ムが軋み隙間が出来て、そこにウッソはすかさず手を突っ込んで踏ん張る。
指先がギシッという振動を聞いて、次の瞬間キャノピーが滑ると中から煙が吹き出て霧散した。
遮るものが無くなれば、そこには意識を手放すヤザンの姿があった。
引火したヤザンのノーマルスーツへと、ウッソは残りの消火剤を全部ぶちまけて、そして飛び込むようにヤザンにしがみつき肩を揺する。
「ヤザンさん、起きてくださいよ!!」
出血などは見当たらないが、彼のノーマルスーツの半身、その表面には焦げがある。
高熱で炙られ続ければ熱が伝導して内部を焼くことはままあったし、炎を完全に防ぐなど出来はしない。
穴が空いての致命的な空気漏れなどが見当たらないのはかなり幸いであったろう。
「う…」
「ヤザンさん!?」
反応があった。
そう思って嬉々としたウッソの首元に、目覚めたと同時にヤザンの強烈な首掴みが炸裂する。
ギラギラとしたケダモノのような目つきがウッソを睨むように見ているがウッソはすぐに察した。
「ヤ、ヤザンさん、ぼ、僕です、ウッソ…です、よっ!」
ギリギリと締め付けてくる手の力がふっと抜ける。
「…ウッソ、か。
すまん、許せ。…ちょいとばかし、嫌な起き方に似てたもんだからな」
「い、嫌な起き方…?」
「昔、シャングリラ・コロニーで拾われた時にな」
ハンブラビのイジェクションポッドを、シャングリラチルドレンに拾われたのは幸か不幸か。
いや、彼らに拾われなければ死んでいた可能性は大きいのだから、やはりあの子供達は命の恩人と言うべきだろう。
だが今はそんな思い出話等に馳せる時ではないと、ヤザンは軽く頭を振ってウッソを見る。
今度のその目つきは鋭いながらも仲間に見せる優しさを取り戻した、いつものヤザンの目であった。
「昔話はまた今度してやるよ。
今は、…くっ、ウッソ、少し手を貸せ」
すぐにウッソは手を伸ばし、その手を掴み体を何とか起こすヤザン。
ウッソは「あっ」と小さく叫ぶ。
「あ、脚が!」
「脚も折れてるし、どうもノーマルスーツの内側も焼けているな。ヒリつきやがるぜ」
「すぐに治療します…!」
メディカルキットに手を伸ばしたウッソの手をヤザンは制する。
「ノーマルスーツはべつに空気漏れも起こしとりゃせんのだ!
そんなのは後回しでいい…、すぐにここを離れるぞ!
一号機はいつ爆発するか分からんぞ!」
「は、はい!」
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