妖獣の爪痕 その1
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ウッソが臍を噛む。
ビームに対しておよそ完璧な防御を誇る眼前の皿乗りのMSザンネックに対する攻略法として、ウッソが真っ先に思い浮かんだのはヴィクトリーの余剰ハンガーとブーツを質量兵器として撃ち込む事だった。
しかし先だっての砲撃によって基地機能が死に、リーンホースすら出撃不能となっている今では望むべくもない。
「坊や、次はヤザンと一緒に私の所においで。
そうしたら一緒に遊ぼうよ、ねぇ…坊や。
うっふふふ…お楽しみはまだまだ先…とっておかないとね」
ザンネックの粒子加速器が光ると、拡散するメガ粒子が弾けてV2を襲う。
当然のようにウッソはその全てをかすりもせず避けきるが、ビームの煌めきに一瞬視界を奪われた瞬間にザンネックは、その僅かな間に遥か彼方へと後退していた。
「逃げた…?…それもそうか。
あいつ以外は皆ヤザンさんにやられちゃったんだから」
殺気の波動を鈴の音に乗せてくるベスパのマシーンがその音を鳴り止ませて、そして大きく退いたという事は、もうあの恐るべき砲撃は今・は・来ないと思って間違いなかった。
ここで仕留めきりたい怖い敵ではあるが、今の自分ではあの敵を倒しきれないとふんだウッソは追撃の選択をとることはない。
牽制をし、残心をしつつも去る敵を見送る。
「また会おうじゃないか、坊や…」
ウッソの頭の中にそういう声が響いた気がして、ウッソは疲労困憊な様子を見せて息苦しさを感じたのか、ヘルメットを脱ぎ、パイロットスーツの襟元も緩め、深く息を吸い、吐く。
「冗談じゃないよ」
少年は一人、呟いた。
恐ろしい敵を追い払えた事に安堵しつつも、倒せなかった事には一抹の不安がある。
またギロチンそのものの、あの超長距離キャノンを持った敵が来るという恐怖が、今後はリガ・ミリティアを襲い続けるのだ。
遥か遠くに光点となって消えゆくMSのスラスター光を見送って、ウッソは(出来ればもう二度と会いたくない)と、そう思ったが、そういう訳にはいかないだろうとも確信していた。
「…今は、そんなことよりヤザンさんだ!」
メットをかぶり直し、襟元を締め切ってウッソは再び強く操縦桿を握った。
ファラ・グリフォンとの戦いは激しいものでとても余所見をする余裕も無かったが、それでも今ヤザン・ゲーブルが敵を倒したという事はウッソは半ば確信する。
敵の気配というものが消え失せていたし、親しい人の危機に際してウッソのようなスペシャルなニュータイプは ――或いは赤の他人や、果ては敵であろうとも―― 命の砕ける音や断末の意識を受け取ったりをしてしまうが、ヤザンがそうい
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