獣と龍と
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起動画面の自己診断プログラムさえが、少なくない項目でレッドを示し、今すぐの整備分解を要求している。
それでもヤザンはMSに活を入れて飛び立たせるのだ。
「ウッソ、俺の分を残しておけよォ…!」
二羽目の鳥が巣より飛ぶ。
だが、この二羽目は見た目は同じでもまるで中身が違う。
この鳥は獣だ。
敵の臓腑までを食い破ろうというケダモノであった。
――Piii!Piii!Piii!
飛んだだけで全天周囲モニターの片隅に表示されている計器類が真っ赤な金切り声を上げている。
IFマニホールドゲージ、回転トルク、MDメガ粒子排出率…全ての数値がおかしな事になっているのがひと目で分かる。
しかしそれでもヤザンはフットペダルをベタ踏みし、グングンと加速を続けた。
エンジンの異音がコクピットチャンバーに響く。
「…チッ、やはりこの距離じゃコイツに乗って正解か…!」
ギシギシと悲鳴を上げ続けるV2一号機を叱咤し続けながらヤザンはコクピット内で悪態をついた。
他のMSならば…たとえ最新機のリガ・シャッコーであろうと下手をすれば推進剤が切れてしまう程の距離を、すでにV2は飛んでいるのだ。
しかも通常加速ならば時間もかかる。
ウッソの救援と、ホラズムの防衛という意味で、ヤザンは傷んだV2を起こすしか道はなかった。
しかし無理をした甲斐はあったというものだ。
「光…!見つけたぜ!」
ヤザンが猛禽類のようにほくそ笑む。
月上空、暗闇の宇宙に次々と咲く光の華は、間違いなく戦闘の証。
望遠モニターでも点のように小さいが、見たことのある雷神が如きマシーンが、V2のシールドに食いついて動きを止めているのがヤザンには分かるというのは、ニュータイプ的な感覚の接続や幻視ではなく、もはや戦闘経験と野性的センスによる感なんとなくという奴で、ニュータイプや並のエース達からしたらそれこそニュータイプ以上に理不尽で強力なセンスであった。
さらにV2を加速させ、モニターの赤いアラームが激しくなっていく中で、ヤザンはV2のFCSが敵機を捉えると同時に引き金を引く。
「間抜けめ…!迂闊に戦場で機動兵器の足を止めるとはなァ!!」
ビームは真っ直ぐにゲンガオゾの腹を貫き、そのパイロットルペ・シノの肉体をこの世から瞬時に消滅させてしまった。
あまりにも性急で鋭い急襲は、ルペ・シノがウッソに執着し過ぎたのもあり、強化された人間に攻撃を察知させさせぬ程であったのだ。
「よぉ、ウッソ。一人で良く持ちこたえたな。褒めてやるぜ!」
「ヤザンさん!!
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