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ヤザン・リガミリティア
妖獣と踊れ
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「あんたは私だけを見ていればいいんだよぉ!」

 

ルペ・シノの叫びに呼応するかのように、ドッゴーラがまるで雲≠吐き出してV2の視界を遮っていく。

二匹の巨大な龍が雲海を泳ぎ、それを睥睨するかのように雷鼓を背負う雷神。幻想世界から飛び出してきたようなバケモノが、ザンネックへの道を閉ざしてしまう。

 

「雲!?こんなものぉ!虚仮威しなんかにー!」

 

ウッソは苛立ちながら雲をライフルで撃ち抜く。しかしそれは唯の目眩ましではない。

メガ粒子を湛えた爆発性の雷雲≠ナあり、大型のダミーバルーンなのだ。

 

「っっ!!爆発!?でも――!」

 

だがウッソはその大爆発の中へと身を躍らせる。光の翼とシールドで自分を包む即席バリアを作って真っ直ぐに雷雲を突き進む。

その様はまるで黒く雷雲を独り飛ぶ光の鳥だ。

光の鳥は、2匹の邪龍に真っ直ぐな光の矢となって立ち向かう。

 

「…っ、抜けた!これでさっきのやつを――」

 

雷雲を抜け、蓮華座に居座る悪鬼を討たんとする。

だが、少年の熱き思いはそこで閉ざされるのだ。

雷神が再び、少年の道を閉ざした。

 

「あは!あはははは!私のぉぉぉぉ、赤ちゃぁぁぁん!」

 

「しまった!?」

 

ザンネックを止めたい一心がウッソの視野を狭めたのか。ゲンガオゾのビームメイスが、真上からV2へと突き刺さる。

V2のシールドとゲンガオゾのメイス…双方のメガ粒子の反発が起き、激しくスパークした。

そして、そこへ間髪入れずゲンガオゾは直近からマルチプルビームランチャーをフルパワーで撃ちまくれば、V2のシールド発生装置は悲鳴を上げた。

だがウッソは迷うことなく即座にV2を回転させると、光の翼でゲンガオゾのビームの嵐を弾・き・、そして高速回転でも己の位置も敵の位置も寸分違う事なく、そのスピードを殺さぬままに鋭く蹴・っ・た・。

 

「なぁ!?私のっ!赤ん坊がぁ!私の夢がなぜそうも私の手を振り払うっ!!こうも母が手を差し伸べているのだぞ!なぜっ!!!」

 

「僕はあなたの夢にはなれませんよ!!僕は誰の道具でもない!お母さんをやりたいなら、自分で子供を生んでそれでやってくださいよ!!!」

 

「あんたはぁ!私のだと言っているだろぉぉぉぉ!!!」

 

仰け反ったゲンガオゾが、驚くべき速さで状態を立て直す。

それは執念だ。

怨念がゲンガオゾを包み込み、まさに怪物へと変じさせているのがウッソには視える。

 

(…!だ、だめだ!やすやすと突破はできない!あのトンガリ頭を止めるのが、間に合わない!!)

 
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