這い寄りし妖獣
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くれたのだった。
「分かっている中でも、ろくに交戦も出来ず一方的に攻撃されてバグレ艦隊は全滅した。
簡単に言えばそういう事だな?伯爵」
「そうだな」
冷酷なまでに冷静に会話をしているヤザンとオイ・ニュングだが、事の深刻さは誰よりも理解していた。
ジン・ジャハナムの筋書きの元、2人が力を併せて政戦両略の車輪となって、ザンスカール包囲網を構築し、リガ・ミリティアそのものの力も増大させてきた。
しかしたった今、その包囲網の一角が消滅し、こつこつと増やしてきたリガ・ミリティアの貴重な艦隊の一つが全滅してしまった。
あれだけ苦労して奪取したカイラスギリー。それによるズガン艦隊撃滅も叶わぬ夢となってしまった。
心の弱い者なら、やってられるかと絶望し投げ出してしまうような、そんな凶報である。
「バグレ艦隊全滅のニュースは、ベスパは喜々として世界に流すでしょうね。
そうすればリガ・ミリティアに吹いていた追い風なんて一瞬で散らされます。
世間なんて付和雷同そのもの…それにもともと地力は帝国が圧倒的に上なんですから」
ミューラの言うことは一理も二理もあるだろう。
リガ・ミリティアは常に勝利し続ける事で、なんとか世間を味方に付けていた。
本当ならば一回の敗北も許されない。それでようやくザンスカールとは対等に渡り合える。
そういう薄氷を踏むような戦争を、リガ・ミリティアは続けていたのだ。
リガ・ミリティアの有利など、所詮はそんな砂上の楼閣だった。
「とにかく、ジン・ジャハナム閣下も計画の大綱を変更するかもしれん。
それほどの大打撃だ。
月での戦力拡充計画はより重要になったから、ここの防備も厚くせねばな」
伯爵の言葉にミューラは頷きつつも異を唱えた。
「でもここは連邦の首都がある月よ?
いくらベスパでも、月面を襲ってこれ以上連邦を刺激したくは無いはず。
それに、ホラズムの秘密工場が簡単に発見されるとも思えない」
「常識で物を考えてはいけないな、ミューラさん。
ベスパはやるよ。
ジブラルタルでの事を思い出してみたまえ。
ひょっとしたら…セント・ジョセフも巻き込んで無差別攻撃をしてくるかもしれんのだ」
「やりかねんな」
ヤザンも首を縦に振り、ミューラの顔にも暗いものが挿す。
確かにベスパにはそういう恐ろしさはある。
だからリガ・ミリティアも目には目を≠ナこうまで形振り構わぬ攻撃工作をするのだから。
「ミューラ、俺のV2はいつ調整が終わる?」
「あと2日といったとこ
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