這い寄りし妖獣
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テジナの番はまだだった。
喧嘩を売ったつもりが、そういう返しをされて少々拍子抜けながら、フランチェスカは素直に手招きに応じた。
それが甘かった。
――パンッ
乾いた音がして、そして段々とフランチェスカの頬がジンジンと熱くなった。
「な…」
フランチェスカが、自分が何をされたかに気付いたのは2秒か3秒経った後だ。
カテジナは冷たい笑顔でフランチェスカの頬を平手打ちしていた。
「とち狂ってお友達にでもなりにきたのかい?」
「ッ!コイツ!!」
カッとなって拳を作りカテジナに殴りかかろうとするフランチェスカ。
ヤザンはそれをいつでも止めることが出来る距離にいながら、だがほくそ笑みつつ止めない。
あっという間に取っ組み合いとなるのは当然だ。
遠巻きに見ていたシュラク隊のジュンコとヘレンも、まるで好きなスポーツ中継を観戦でもするような笑顔を浮かべてコンテナに深く腰掛け眺めている。
ヘレンなど、寧ろ自分も参加したそうに「やれー!そこだ!」などと野次を飛ばしていて、そんな騒動だからあっという間に人垣が出来るのは当たり前だ。
ハンガーデッキ中の整備士も集まり、やがて他のシュラク隊メンバーまで観戦に来て…ケンカなど娯楽の一種でしかない戦場の人間達はこんな事さえ楽しむ。
だが、乱痴気が過ぎれば娯楽も罰せられる。
そんな事は戦場生活が長いヤザンは充分知っている事だった。
「息抜きにはこういうのも必要だがな…おい!そろそろゲームセットだ!!」
カテジナとフランチェスカが同時に繰り出したビンタだか爪立て引っ掻きだかを、ヤザンはしっかりと左右の手で受け止め、女同士の戦いの終わりを宣言した。
それを見て、野次馬連中も「ここまでか。いやー見ものだったな」とか「キャットファイトって生で初めて見たぜ」とか好き勝手言って解散しだし、ジュンコとヘレン達も「ちぇっ、これからがいいトコだったのにね」「バーカ、あれでいいのよ。アレ以上やったらパイロット潰れるでしょ」「止めるタイミングどんぴしゃだね、隊長は」「そりゃ、本人も慣れてるでしょうからね。ケンカああゆうの」とまぁ、対岸の火事とばかりに他人事である。
「……ふぅー…!…ふーっ!」
「…っ、はなし、てよ!」
小綺麗な金髪が乱れ、顔に幾筋の引っかき傷を作ったカテジナ。
もともとくしゃくしゃ気味だった癖のあるオレンジ髪をさらにボサボサにし、右目に少しの青あざ、唇の端から流血のフランチェスカ。
両者鼻息荒く、腕をヤザンに捻じりあげられながらも互いを睨み合っている。
ヤザンはやはり愉快そう
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