妖獣の足音
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る2人は、自然と口調が挑発的だったりになりがちなのだ。
「確かにな。モビルスーツだけじゃなく、捕虜の尋問も忙しいんだろう?」
「…」
ミューラの目がやや鋭くなり、黙ったままヤザンを見据える。
ヤザンは冗談を言うような雰囲気でその鋭さに悠然と切り込んでいく。
「パイプラインを通してここに持ってきたのはシャッコーとアビゴルだけじゃないからなァ。
リーンホースに捕らえていた人食い虎…ゴッドワルド・ハインとその部下達もここに移ったってな。
あいつらは元気か?」
「ええ。まだ生きているわよ?会いたいの?」
「会ったら、その有様を見て貴様を殺すかもしれん。止めておこう」
ミューラ・ミゲルは極めて優秀なMS技師というだけでなく、ザンスカールの諜報部がマークする冷酷なテロリストでもある。
MS開発から破壊工作、殺人、何でもござれだ。
当然、拷問も…である。
情報を引き出す為なら、軍が条約で禁ずるあらゆる非人道的な尋問を実行する事を厭わない。
ゴッドワルド・ハインとその部下達も、MSの仕事が終わった後のミューラによって、その尋問≠受けているだろう事は想像に易い。
ゴッドワルドは厳しい訓練を積み、相応の覚悟を抱いている屈強な軍人だ。
そういうのも想定の内だろう。
だが、それはヤザンから見ても気持ちの良いものではない。
オイ・ニュングの拷問程度ならばヤザンも戦争の暗部として受け入れているが、ミューラの拷問は度を越すのだ。
屈強な軍人であればあるほど、果たしてゴッドワルドが人間の形をどこまで保っているのかが気掛かりだった。
憐れにも思う。
「…やり過ぎれば無駄な恨みになるぜ、ミューラ・ミゲル。
一思いに殺すのも慈悲だ」
「引き出せそうな情報を全部出せたら勿論そうするわ。
でも、まだまだ話せる事がありそうだしね…彼。
これも正義の勝利の為よ、隊長」
「…お前と話しているとティターンズの連中を思い出すな」
ヤザンは吐き捨てるようにそう言ったがミューラは少しも動じない。
「過去の伝説的精鋭部隊の人達に擬なぞらえて貰えるなんて光栄ね」
やはりミューラは顔色一変えずに冷たく言い放った。
こういう女であった。
息子のウッソには愛情を見せるものの、それすらも教育の合理的判断の一つではないかとすらヤザンには見える事がある。
結局、今の一連の会話にしても彼女が感情を動かしたのはV2への不満を言ってやった時だけなのだ。
ヤザンでさえ、ミューラ・ミゲルを恐ろしい女だと思う。
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