妖獣の足音
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盗んで、それぞれエリシャ、マルチナと密会をしているようだ。
しかし、恋慕する少女達との逢瀬を重ねつつも、少年達同士でも新型MSの調整や訓練の合間にバカ騒ぎをする良き時間がある。
ウッソ・エヴィンの今までの短い人生の中でも最も充実した日々だったかもしれない。
尊敬できる大人と、大好きな母と、恋い焦がれ触れ合いたいと思える少女。友人達。
シャクティもまた、同世代同性のクランスキー姉妹やスージィと良き関係を築き始めているし、クロノクルとカルルマンとは本当の家族のようになってきている。
カサレリアの森の土と動植物と触れ合う日常にこそ戻るべきとウッソもシャクティも思っているが、こういう充実具合も悪くはなかった。
そんなウッソの月での主な仕事はやはりパイロットだ。
母とヤザン、シュラク隊とオリファー、マーベット、カテジナ達と、日夜、協議したり試行錯誤を繰り返してV2やリガ・シャッコーのモーションデータをより洗練していき、微々たる問題点も洗い出していく。
そして改善し、また試験と訓練。
パイロット達もモビルスーツ達もより洗練させていく。
戦力を急激に増加させるカミオン隊…しかし問題点がないわけじゃない。
「ミューラ、このアビゴルの修理が出来ないってのは確かか」
格納庫でV2のミノフスキー・シールドを調整するミューラ・ミゲルの元にやってきたヤザンが、診断機に寄りかかりながら不満気に彼女に言った。
ミューラは視線をV2に向けたまま、手を休めることなく「そうよ」とそっけない返事を投げてよこした。
ヤザンの薄い眉がひん曲がる。
「ホラズムここでも直せんのか」
「出来ないことはないけれど…。
両脚も無くなってるし、内部機構にもガタが来ているから、修理のレベルじゃなくなるわね。
あなた程の人がここまでの状態に乗機をされるなんて、相手はよっぽどバケモノだったのかしら。
今は特殊機のアビゴルをわざわざ作り直すよりも、リガ・シャッコーの追加生産とV2の完成度を高める方が優先なのよ」
「なら、シャッコーはどうして直した」
「あれはリガ・シャッコーのオリジナル機だし、拡張性と互換性があるからよ。
アビゴルなんて、殆ど全部の部品が特注じゃない。
性能が良いのは認めるけど、今のリガ・ミリティアにはあんな使い回せない金食い虫に構ってる余裕は無いわ」
相変わらずミューラは冷たい物の言い方をする女だった。
ヤザンの鼻から溜息が漏れ、リーゼント頭を手で一度擦る。
「やれやれ、じゃあアビゴルはここでスクラップかよ。
お気に入りだったんだがな」
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