妖獣の足音
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座に監視対象の強化人間達へ通信チャンネルを開いた。
「ルペ・シノ中尉、ピピニーデン大尉、ファラ中佐…調子はどうです」
監視対象であり不出来な人形として内心見下しているものの、階級は全員上だ。
最低限の作法を守って彼らに声をかけるが、返事はそっけないものが返ってくるだけだった。
ピピニーデンは「問題はない」と機械的に答え、ルペ・シノは「今日は私の子がよく泣くんだ…きっと坊やには会えないね」等と訳の分からない事を宣い、ファラ・グリフォンはただ笑っているだけだった。
(…人形どもめ。戦場は…貴様らのようなモルモットや女子供がしゃしゃる場所じゃない。
俺のような…男の戦士の為の場所なのだ)
ブロッホは直様通信を切断し、思い切り舌を打つ。
(こんな狂った人形どもの面倒など、どうしてこの俺が…貧乏クジというヤツか。
戦場であのヤザン・ゲーブルと遭えるかもしれないというのだけは救いだがな)
ブロッホの楽しみは、内心では尊敬するヤザン・ゲーブルとの邂逅だ。
味方として彼に教えを請いたい所であったが、敵ならば敵で楽しみは別にあった。
女子供への蔑視といい、戦場での楽しみ方といい、ブロッホという男は昔のヤザンの気質に似ていた。
ただヤザンとブロッホで決定的に違う所も多い。
柔軟性や頭の回転の速さや、それに投げ捨てるべき時にプライドを投げ捨てられる…そういう思い切りの良さだろう。
ヤザンは生き残るために無様であろうと惨めであろうと、そんな境遇を受け入れられる。
だからリガ・ミリティアという民間ゲリラ組織が貧乏な小規模所帯の時から、こそこそと汚い仕事で食い扶持を稼げた。
ブロッホは少々プライドが高すぎて頭の固い所があるように見受けられた。
「ヤザン・ゲーブルは月に行っただろうからカイラスギリーには残っていないだろうな…なら今回は人形共に精々暴れてもらうかな」
ドッゴーラの計器類のオールグリーンなのを確認しつつ、ブロッホは独りニヤつく。
監視役などと言っても、撤退タイミングや攻撃対象を提案するだけであり、今回のような、ただ暴れるだけの任務ならば手綱を放りっぱなしにするだけで良いから楽だとブロッホは思う。
そんな手綱を握るべき暴れ馬達…ルペ・シノはぶつぶつと子供への愛を語り、ピピニーデンは電池が切れているように見開いた目で虚空を見つめながら沈黙したまま。
そして、最後の1人…ファラ・グリフォンもやはりルペ・シノと似た症状を発現させているのだった。
ファラはゲンガオゾをルペ・シノに譲り、今は円盤のような異様な大型サブフライトシステムの上に鎮座し、静かにア
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