妖獣の足音
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空間で、彼女に母親であることの希望を教えてくれた少年。
出会っただけで、その希望をあの少年は教えてくれた。
だからもう一度出逢えば、あの少年は今度は自分の女の宮殿に戻ってきてくれるに違いないとルペ・シノは思い込んでいる。
ルペ・シノにとって、MSの装甲越しに一度声を交わしただけのあの少年は天使のように昇華されて魂に張り付いていた。
そんなルペ・シノのゲンガオゾの前方には2機の大型マシーンが巨大なクレーンに吊るされている。
胴体だけでMSを超える巨体であり、胴体下部は長い長い蛇の尾のようで、東洋の龍のようなモンスター的外見である。
鋼鉄の怪物はその尾をタイヤのように丸めて腹に抱え込み、物言わず静かに眠っていた。
その怪物…緑色と橙色の同型機は名をドッゴーラといった。
緑の1号機ノーマルタイプにはブロッホ少尉。
橙の2号機サイコミュ試験機にはピピニーデン大尉。
量産が叶えば連邦軍を全滅させられるとベスパの開発陣が太鼓判を押すMAで、ドッゴーラ1号機パイロットのブロッホはコクピットの中で忙しくチェックをしつつ、艦橋のキル・タンドンと通信もしていた。
「強化人間達ですが、暴走の危険性はないのですな?作戦参謀」
「ブロッホ少尉。サイコ研の技術力を信じてもらいたいものです」
「しかしファラは以前、精神を著しく乱し敵前逃亡をしたとか」
「それはサイコミュ・デバイスの不調による一時的な錯乱が原因と判明しているのですよ。
既にその問題はクリアされて何ら問題はありません」
「信じていいのでしょうな」
「無論です」
通信機越しにキル・タンドンは自信たっぷりにそう言い切ったが、無論嘘だった。
ゲトルにさえ嘘を言っている。
ファラ・グリフォンはともかく、ピピニーデンとルペ・シノに関しては短期間での強化処置であるから無理が祟っている。
既に自我の4割までが壊れたのをサイコ研は確認しており、脳組織に直接埋め込んだデバイスがなければ命令もろくに聞けない有様だった。
搭乗機の性能もあって、それはまるで爆弾だ。
カガチがそんな爆弾をゲトルのモトラッド艦隊に押し込んだのは、つまりはその程度の信頼度しかないという事なのかもしれない。
兵器≠ニしての信頼度は低いが、その破壊力と爆発力はただ捨てるのは惜しい…「爆発するなら、精々カイラスギリーのバグレ艦隊か、それともカミオン隊を巻き込んで派手に爆発してくれ」…そんなカガチの願いであろうか。
「…了解です」
不満を隠すこともせず、ブロッホは厳つい顔に険しいシワを浮かべて作戦参謀との通信を切り、そして即
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