妖獣の足音
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ますよ。
あなたが失態を重ねたから私に陽の光が射したのですからね。
そしてここでも、あなたは私のために働いてくれる…感謝してもしたりませんなぁ。
貴方の、パイロットとしての力でカイラスギリーを再奪取、もしくは破壊した後は…このまま月でオイ・ニュングを始末してみせましょう。
そうすれば、私は一躍、英雄だ…かつての、あの憧れの…美しくも邪魔だった上官が…こうして私の立身の踏み台になる。
人生とは面白いものですなぁ…く、くくく)
自分を良いように使うタシロもカガチも、一気に超えて女王に近づくチャンスかもしれない。
ファラ・グリフォンの時はそれが出来たのだから、一度起きた事は二度目も無いとは言い切れない。
二度ある事は三度ある≠ニも古来言われる。
ゲトルはそう思ってしまい、そして彼がいくら小物とはいえ、チャンスと思えたそれをむざむざふ・い・にする程無欲な男ではない。
幸運にまみれた上官越えを経験してしまい、今、武力を持った小物な野心家はまことに危険で甘美な罠に陥りだしている。
一家庭人として見れば、まだ善良で常識的であったゲトルだが、今では甘美な罠に堕ちてそういった美点も汚れつつあった。
化学反応が起きてしまっていた。
その結果幾分によっては、この分不相応な欲望に飲まれた小人物は、後に大きな災いとなって月を襲うことになるだろう。
一度起きた事は二度目も無いとは言い切れない。
ジブラルタルで永世中立の引越公社ビルを爆破したような凄惨な事件だって、愚か者がいれば何度だって起きるのだ。
バイク戦艦アドラステアの格納庫。
そこには幾つものMSが稼働状態で佇んでいる。
ベスパのメカマンにとって多数のタイヤ≠ェ並ぶ光景は異様で、またその搭載機の中に一際異彩を放つマシーン達がいた。
まずはゲンガオゾ。
以前は欠けていた装甲が万全となり、背の雷鼓≠焜Tイコミュシステムの調整は、新たなパイロットとの同調がなされている。
登録パイロット、ルペ・シノ。
彼女はゲンガオゾのコクピットの中に赤子の人形を持ち込んでいて、それに向かって何かを囁いていた。
「あぁ、またあの坊やに会いたい。会いたいね…。
そうしたら…あの坊やは私の子宮の中に宿ってくれるんだ。
あんなスペシャルな子供がいたら母親をやるのもきっと良いものさ。
あぁ坊や…お母さんはここにいるんだよ…」
ルペ・シノは赤子の人形に頬を艶やかな手つきで擦る。
ルペ・シノが思うのは戦場で出会った無垢な少年の事だけだった。
戦場という血で血を洗う、女でいられないあの狂気の
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