妖獣の足音
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思議な出世を遂げていた。
そして当然、そういった腹芸を、ゲトルはタシロへの忠誠心からやっているわけではない。
ゲトルの本心は、タシロとカガチとの間を渡り泳ぎ、機を見て勝ち馬に乗ることだけだった。
誰からも小物と思われているゲトルは、やはり小心者の鬱屈した小さな野心家であった。
「…オイ・ニュングは月のセント・ジョセフを最後に姿をくらましている。
やはりあの付近にリガ・ミリティアの拠点があるのだな」
(…ファラ・グリフォンですら、とうとう地球では捕らえられなかったオイ・ニュング…。
邪魔ったらしいコバエめ。引越公社を抱き込み、メディア戦術まで展開する小賢しさ…。
ファラが地球で奴を始末していれば、こんな面倒な事にはならなかったものを)
現在、彼の艦隊モトラッド艦隊≠ヘカイラスギリーへと向かっている。
これは、カガチとズガンが、いつでも本国を狙い撃てるカイラスギリーをそのままリガ・ミリティアの手に委ねておくのは危険と判断したからだ。
リガ・ミリティアがカイラスギリーを修復してしまう前に、必ず何とかする必要があった。
しかしズガン艦隊とその他の艦隊は、フロンティア艦隊、マケドニア連合艦隊と未だにやりあっていて動けない。
だからこのモトラッド艦隊を遊撃艦隊とし自在に動ける手駒にしつつ、少数ではあっても極めて危険なMSとパイロットを所属させたのだ。
それは、バグレ艦隊とカイラスギリーを殲滅するに足るモノ達である。
小心な野心家が、己の器を越えた自由裁量権と戦力を預けられたという事だ。
「…間もなくカイラスギリーのリガ・ミリティア艦隊と接敵する。
総員、第二戦闘配置から第一戦闘配置へと移行せよ。パイロットはコクピット待機。
……キル・タンドン、例の4人…仕上がりはどうか」
ゲトルがキル・タンドンへと確認すれば、若き作戦参謀も少々悪人染みた笑みを浮かべた。
「ファラ・グリフォンとザンネックは安定しています。
またアルベオ・ピピニーデンとルペ・シノも精神状態は良好であります」
「かつてのピピニーデン・サーカスも今や強化人間となって私の指揮下…。
ふふ…ファラ・グリフォンといい…哀れなものだが、人間落ち目になればあんなものだろうな。
…戦場での監視役にはブロッホ少尉だったか?」
「はい。少尉ならば充分に役目を果たしてくれるでしょう」
ゲトルは静かに、そうだな、と呟き微笑む。
そして心の中で独り言葉を続けていた。
(ふふふ…ファラ・グリフォン…オイ・ニュングの件は貴方の尻ぬぐいですが、それでもあなたには感謝してい
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