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ヤザン・リガミリティア
獣爪は月で研がれる
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「ん?ミズホ・ミネガン…だったな」

 

「え…は、はい!私なんぞの一介のメカマンを覚えていて下さって嬉しいですよ、隊長」

 

「メキシコの支部タンピコに行くのではなかったか?」

 

そう言うとミズホは驚いた顔を見せる。

まさか自分のような端っぱの一メカニックとの雑談を覚えているとは思わなかったのだ。

ヤザンという人は整備士とパイロットの顔を覚えるのは人一倍早い。

 

「その予定でしたが、

新型の開発にかかりきりで殆どのスタッフがタンピコ行きは無しになったんです」

 

そこで興味深そうに、ストライカーが集団の中から一歩前へ出てくる。

 

「ガンイージをブラスタータイプへ簡易改修するだけって話が、一から新型を造る事になったって…アイツのことか?」

 

ミズホは頷いた。

 

「そうです。隊長が使ったシャッコーのデータがあまりに優秀で、ミューラ先輩がフレーム基礎構造を見直そうって言い出して…。

シャッコーから取れたデータを元にガンイージをフレームから改修していったら、ほぼ新造の別機体になりましたってオチです…あはは」

 

そう言ったミズホの顔は笑いながらも引きつっていた。

ミューラというのはこういう無茶を良くやる人だ。

天才的かつ独善的な部分があって、一度天啓を得てしまうとスタッフが眠る深夜だろうが疲労困憊の完徹明けだろうが皆にその閃きをフィードバックさせる。

そして有無を言わさず突貫作業に入ってしまうのだ。

ミューラ・ミゲルが忌避される先輩であるのはこういう所にも由来する。

リガ・ミリティアの次期主力としてガンブラスターへの改良だけで済む筈が、突然、殺人的短期間で新型量産機を1機種7機造らされたホラズムの開発スタッフには同情してもし足りない。

だがそんな事はお構いなしにストライカーは矢継ぎ早にミズホへ質問を飛ばす。

 

「ってことはあれは一応ガンイージの改良型なのか…ガンイージの面影は皆無だな。色ぐらいか?」

 

「その通りですけど、内部は意外とガンイージと共通パーツが多いですよ。

ま、パーツまで一から新造する余裕が無かったってのが主な理由なんですけどね…。

でもお陰でガンイージは勿論、Vタイプとも部品は互換性がありますから整備性は良好です。

フレームと装甲と…幾つかの武装が新造ってことになりますね」

 

熱心に頷きながらストライカーはミズホの説明に耳を傾ける。

ストライカーもまた、ヤザンと共にシャッコーと関わる事が多かったから愛着もある。

そのシャッコーの面影が色濃いあの新型達への興味は強い。

 

「そうか
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