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ヤザン・リガミリティア
女獣達
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を打ち据え従えたいと考えているのに、

彼女の精神と体はこの男に隷属し、所有されたがっているのが彼女自身分かる。

己の恥ずべき心に負けまいと必死に男を睨みつけるが、

眼まなこの芯まで性愛に犯され頬は紅く染まっていれば迫力などある筈も無かった。

それどころか今のカテジナが男を睨みつけても、

それは男の情欲を刺激する手助けでしかない。

 

(だめ…やっぱり、こいつに…勝てない。私はこいつに…モノにされてしまう)

 

少女はとうとう認めてしまう。

そして認めた瞬間、カテジナの心は様々な束縛から解き放たれていくのだった。

ウーイッグで現状に不満を持ちながらも甘んじていた無力な自分。

両親を愚かと見下しながらも、その庇護下で苦労知らずに育った自分。

子供を戦わせようとする恐ろしい老人達の巣窟たるリガ・ミリティアと、

そこに保護を求めるしか出来なかった自分。

見下したその全てに受け入れられなかった、世間知らずの無知蒙昧な自分。

そして、そんな中で自分を一人の女として見、戦士としての活路を見出してくれた男。

この男はどこまでも一人のカテジナ・ルースを求めた。

それがどうしようもなく嬉しく、心満たされる。

一度認めてしまえばもうカテジナの肉体と心は蕩けていき、

もはや棘の鎧で心を武装する事も出来ない。

カテジナの魂は、既に野獣の爪と牙で丸裸にひん剥かれていた。

 

「ああっ!」

 

ケダモノへ屈服するかのような屈辱的な姿を晒されて、

白い太ももを割り開かれて男が侵入してくる。

痛みを思う間も無い。

カテジナは必死に男にしがみつき、逞しい背に爪痕を残す。

ラビアンローズの爛れた夜のさなか、カテジナは男を受け入れ女になった。

その夜から、丸一日、カテジナとヤザンの姿を見たものはいない。

今までの自分を消し去りたいと言わんばかりに、カテジナは貪欲に男に愛される事を望み、

そしてようやくカテジナにこびり付いていた憑き物が落ちたのだった。

 

彼女らの姿をオイ・ニュングとゴメスが再発見したのは、2日後の食堂である。

 

「ん?彼女、あんな落ち着いた雰囲気があったかな?」

 

「…さぁ?女は目を離した隙に蛹から蝶になりますからな」

 

剣呑なものを大なり小なり常に孕んでいたカテジナ。

それが、霧散した…とまでは言わないが、和らぎ、そしておおらかになったように感じる。

カテジナの持っていた攻撃的なオーラとでも言うものが、

圧力はそのままに余裕と懐の深さを身に着けつつあるようだと、

人を見る目のあるニュング伯爵は感じたのだ。


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