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ヤザン・リガミリティア
ラビアンローズでの獣の夜
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招くが、それは招くというより放り投げるという感じだ。

丁重に女性を扱うべし、という恋愛雑誌のセオリーとは真逆であったが、

それでもそういう扱いをされて貞操の危機にさらされている筈のカテジナは騒いでいない。

何か文句らしき言葉を甲高い声で喚いているが、決して大声では叫んでいないのだ。

危機を感じ、他人を呼ぶ気がまるで感じられない。

 

ヤザンはカテジナを開いた扉から自室へ放り投げると、

彼の鋭い目を廊下の角へ向けた。即ちウッソ達の隠れる角だ。

 

「こっから先の見物料は高いぜ、ガキども」

 

少年達の肩がびくりと揺れた。

直様転進し、戦略的撤退を…と思った子供達だがもう遅い。

 

「そんなに見たけりゃ見せてやってもいいがなァ?」

 

言いつつ、上半身をはだけた特注の黄色い改造制服姿のヤザンが、

引き締まった胸筋も顕にズンズンと覗き魔集団へ迫る。

まだ見つかっていないと思っている後ろの少年少女は慌てて逃げようとするが…

ヤザンのその言葉に「え!?」と反応してしまったオデロとウッソが肩を掴まれる。

 

「ちょっとヤザン、さっきから通路で誰と――…え?

ウ、ウッソ?ちょ、ちょっと…なんで他の子達まで…シャクティも!?」

 

カテジナが、少しはだけたパイロットスーツ姿も妖艶に、

ひょこっとヤザンの部屋から覗いてきて騒動の正体を見た。

 

「っ!ト、トマーシュ!あなた、つけてきたのね!?さ、最低!

フラれた腹いせにストーキング!?どういうこと!」

 

「えっ!ち、違うよ…!僕は!」

 

カテジナは先程の逢瀬を見られたと覚った羞恥と、怒りからの赤い顔で喚きだし、

そしてあらぬ誤解を受けたトマーシュは慌てて首を振るも分が悪い。

だがヤザンは少年らの肩を持った。

 

「その程度許してやれよカテジナ。別に減るもんでもない」

 

「馬鹿言わないで!わ、私は…男とくれば肌を晒すような安い女じゃないの!」

 

そう言った時、カテジナの脳裏によぎったのは両親の姿。

父は仕事にかまけて家庭を蔑ろないがしろにし、愛人と共に仕事場に入り浸り。

母は夫が家に帰らぬのを良いことに情夫を作り、とっかえひっかえ。

最後には浮気相手と共に資産の一部を持って行方をくらませた。

浮気とは即ち、自分の家庭の温かでささやかな幸せを破壊したものであり、

カテジナは心に決めたパートナー以外に肌を晒すのを憎んですらいる。

 

「俺は言い寄ってくる女なら受け入れてやるがね」

 

カテジナは浮気をするような人間は男女関係なしに嫌い
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