ラビアンローズでの獣の夜
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大会戦での勝利や、念願の母の情報もある程度知れたりで、
ウッソはその言葉に甘えてシャクティと二人でディナーを楽しんでいたが、
食堂でオデロ達と出会いその帰り…というわけであった。
取るに足らない雑談を交える子供達。
何という事もない、特別ではない時間。
戦争がなければ日常風景の一コマでしか無いそれは、
ウッソにも彼以外の子供らにとっても黄金よりも尊い。
和気あいあいとした長閑な空気すらそこにはあった。
ただ、彼らの会話内容がMSの性能だとかパイロットの強さのランキングだとか、
どこそこのコロニーでまたギロチンが行われたとか、
あの人の家族もベスパの人狩りにやられたらしいとか、
そういう戦争にまつわるものばかりなのは、これはもうそういう寒い時代という事だった。
そんな中でもシャクティだけはウッソ相手にカルルマンがゲップが上手になったとか、
夜泣きが減ってきたとかそういう話題で、
戦争関連の話からウッソと共に遠ざかろうとしているのは健気に見える。
とにかく、そのように子供らではしゃいでいたわけだが、
その中には一行と仲の良いトマーシュ…マサリク兄弟の兄の姿は何故か無かった。
「カレル、トマーシュの奴どこ行ったんだ?もうこんな時間なのに飯も食わずに」
「兄さんなら、ヤザンさんに何か頼まれたみたいで手伝い終わったら食べるって」
その時はそれで終わったのだが、
一行が子供達にあてがわれた客室へと向かう食堂からの帰りの廊下道で、
角を曲がった拍子に先頭を歩いていたオデロが急ブレーキを掛けた。
どしん、とオデロの背中に玉突き事故を起こす子供達。
「イテテ…なんで急に止まるんだよオデロ」
「ばかっ…!シー…っ!」
「むぐ」
鼻を打ち、抗議の声をあげたウッソの口をオデロが塞ぐ。
皆が小声で「なになに?」「どうしたのよ」「誰かいるの?」と廊下の角から頭を出し覗けば…
「…あれ?兄さんだ」
カレルの言う通り、そこには「忙しいから」と皆と食事を断ったトマーシュがいた。
しかも彼の目の前には金髪の美少女、ウーイッグのカテジナ・ルースの姿もある。
そ・う・い・う・事・への関心が高く、
なおかつ頭の回転が速いオデロはすぐに察しウッソの口を塞いだのだった。
そしてオデロの行動と表情を観察した他の子供らも、
宇宙戦国時代をしたたかに生きているだけあって察しが良い。
小綺麗な箱を後ろ手に隠し、頬をやや赤らめしどろもどろに、
時に上擦った声を出しながらカテジナに話しかけるトマーシュの姿は
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