ラビアンローズでの獣の夜
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「え…」
生真面目なトマーシュといえど17歳の青春盛り。
太陽電池衛星などという窮屈で閉鎖的な場所で暮らしていただけあって、
相応に異性への関心は高まっていて、
特に今はカテジナが目の前で性的接触キスをしたのを目撃してしまったのだから、
トマーシュの瞳には甘い誘惑への強い興味が浮かんでいた事だろう。
少年の瞳に宿った光を見抜いてヤザンは笑う。
「ハハハ!ま、そういう年頃だ。俺だって覚えがある。
今日のところはお前の負けだ…俺に譲れ。
そして、貴様がもっといい男になってまだカテジナに気があるなら…口説いてみろよ」
俺から奪ってみせろ。そう発破をかけられる。
さっきまでは、トマーシュの心の中にはフラれた悔しさとか、
目の前で片想いの少女の唇を奪われた事などで、ドロドロとした物、
屈折した物が渦巻きかけていたのだが、不思議とヤザンと話しているとさっぱりしてくる。
こういう男になら、好きな女を取られるのも悔しくはあるが納得は出来た。
悔しいのは変わらずに悔しい。しかしそれは泣き寝入りする悔しさではない。
闇討ち等で仕返しするのではなく、正々堂々正面から復讐…いや、見返したい。そう思う。
「…いいんですか?僕のほうが、若いですから。
すぐにカテジナさんに見合う男になりますよ。
あなたは僕より、一周り以上も上で、あなたは僕より先に年取ります」
実を言えば一周り12歳どころではない年上のヤザンだが、
それはさておいてトマーシュは温厚で実直だが、負けん気や闘争心の強さも秘めている。
ザンスカールへの憤りからハイランドを飛び出し、
こうしてリガ・ミリティアに付いてきている事からもそれは分かる。
あのヤザンの目を見返しながら啖呵を切って言い返したのだった。
そしてそれをヤザンは喜ぶ。
「その意気だ。いい面してやがる。やれるものならやってみろ、ってとこだな。ハハハ!」
待ってるぜボーヤ。背を見せながらそう言い残し去るヤザン。
後には、尊敬の念やら競争心やらを掻き立てられたトマーシュと、
そして桃色の思考と感情に心を掻き混ぜられた二組の少年少女が残される。
「ヤザン隊長…怖いけど、かっこいいな…」
「ぼ、ぼく、今度…隊長の言ってたお店…連れてってもらおうかな」
「ええ…ウォレンさん、マルチナの事好きだったんじゃないの?」
「い、いや…社会勉強というか…」
カレルとトマーシュは、マイペースにそんな感想を言い合っていた。
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