宇宙の魔獣・カイラスギリー その6
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用できる軍事的指導者は姿を消して久しい。
時代の節目に時折そういう者が現れては乱を起こし消えていくが、
乱の規模はどれも小さく、とても戦争と呼べる規模ではなかった。
戦いの規模が縮小するにつれMSの個人技に重きが置かれるようになれば、
自然と将官級の軍人の仕事は事務仕事ばかりとなる。
今の連邦を見ても、高級士官はただ政治家や官僚とパイプを繋ぐ癒着力だけが必須技能で、
戦場での状況判断能力や指揮能力を持った将校等、片手で数える程しかいないのだ。
ザンスカールのズガンや連邦軍のムバラクなどは、
現代最後の将軍と呼んでも過言ではない存在で、
タシロ・ヴァゴもまたその将≠フ範疇にぶら下がる男であるから、
ザンスカール首脳部はタシロが失態を犯そうとも簡単に切るに切れない。
「…右翼の弾幕が薄くなってきている。上に展開しているMS小隊を右翼に回せ。
本隊からカリストも1隻、そちらに回してやれ」
戦場の至る所を映す荒れた静止映像混じりのカメラを忙しく見渡し、
不利になるフィールドを見つけては補強していく。
防御を厚くし、後もう少しリガ・ミリティアの猛攻を凌げばカイラスギリーは起動を果たす。
それまでの辛抱だ。
(そうだ…私ほどの軍人をそうやすやすと切ることは出来んさ)
改めてタシロは己に言い聞かせた。
だが、言い聞かせるという事は、つまり根底では自信が揺らいでいるという事だ。
地上での失態の殆どはファラ・グリフォンに押し付けたし、
この戦に負けたとしてもラゲーン地上司令部から拾い上げた
ゲトル・デプレに責任を押し付ける手筈は整ってはいる。
ジブラルタルで引越公社のビルを吹き飛ばしてくれた実績が役立ってくれるだろう。
だが、それでも…カイラスギリーを失ってしまっては、
今度ばかりはタシロはお咎め無しとはいかないとは彼自身薄っすらと理解している。
寧ろカイラスギリー失陥を契機に、
クロノクルMIA戦闘中行方不明事件=Aジブラルタル領域侵犯且つ敗北=A
カイラスギリー建造遅延%凾フ全てが蒸し返され、再び責任追及される可能性が高い。
ムッターマ・ズガンは自分の野心を見抜いているかもしれず、
煙たがっている素振りがあるからして油断が出来ない。
切れる尻尾は多ければ多い程安心できるが、
しかし切る尻尾がとても足りないのはタシロにはストレスであった。
そう考え込みつつの指揮は、傍から見ればさぞ熟慮した慎重な指揮に見えたろう。
ゲトル・デプレが、己がトカゲの尻尾≠ナしかない事など思いもせず、
副官としての立場に胡座をかいて
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