宇宙の魔獣・カイラスギリー その5
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複合複眼式マルチセンサーの探査モードで念入りに索敵をしつつ、
未だにスパークしているガンイージの胴部を、アビゴルの大きな腕がそっと抱えた。
「ペギー!」
触れ合い通信がヤザンの声を届けている筈だが、数瞬待ってもガンイージから反応は無い。
ヤザンはもう一度彼女の名を呼んだ。
すると、
「う…隊、長…?」
力無い女の声が確かにそこからした。
パイロットの声に力が無いという事は、負傷が著しいか…
それとも生命維持装置のトラブルかというのが相場だが、
しかし自分を隊長と認識したのだから
酸素欠乏症の心配はまだ無いだろうとヤザンは判断できた。
「そちらの状態はどうだ。ハッチを開けて出てこれるか?」
「う…は、はい。大丈夫です…」
「よォし、ならばさっさと出てこい。ここは戦場のど真ん中でなぁ?
チンタラされたらこちらが危ない」
「っ…は、はい!」
孤独な遭難の中、救助に来てくれただけでどれ程嬉しいか。
それは漂流を経験した者にしか分からないだろうが、
地球の海山での遭難も恐ろしい苦難と孤独が待ち受けているというが、
それが無限に続くという謳い文句すらある宇宙の深淵に放り出されての遭難となると、
その恐怖と孤独感はどれ程だろうか。
しかも、自分を迎えに来てくれたこの男は戦場を掻き分けて来てくれたらしいとなれば、
歓びは筆舌に尽くし難い。
ペギーは、救急パッドで仮初めの治療を施した太腿を叱咤し動かす。
宇宙世紀の軍事救急パッドはノーマルスーツの破損から起きる酸素漏れも補修できるが、
ペギーの太腿の傷はかなり深く、また脇腹や胸部にも大判の救急パッドを貼っつけていた。
つまり、中々の負傷を彼女は負っていた。
(ヤザン隊長…!来てくれたっ、来てくれた…!)
動くのも億劫だった体を動かして、もどかしいとばかりに慌ててコックピットを飛び出た。
「うわっ」
勢い余り慣性で飛んでいくペギーはくるくると宙を漂って、
パシッと鋼鉄の巨掌が彼女の体を受け止めた。
その大きな大きな手は鋼鉄だというのに彼女には何故か優しく、柔らかに感じられる。
『しつこく生きていたな!さすがは俺の部下だ!褒めてやるよ、ハッハッハッ!』
アビゴルの掌が、彼女の愛しい男の声を伝えてくれる。
ペギーはアビゴルの指に縋り付くようにしてしなだれていたが、
すぐにアビゴルにコクピットに押し込まれる。
そこにはペギーが一番縋りたかった男が不敵な
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