宇宙の魔獣・カイラスギリー その5
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どんどん戦場に投入してくる、なんて…
ぐ、ぅ、あ、焦っている証拠だと思いますよ」
アビゴルのGに苦しみながらもペギーが予測の回答をヤザンに与えるが、
ヤザンはそれに返す事も無く回避に神経をすり減らす。
アビゴルがまた不規則な軌道を描く高速で宇宙を跳ね回って、
敵新型が猛射するビーム嵐を装甲スレスレに潜り抜けていく。
「っ!チッ、ゾロアットまでおいでなすったかァ!」
ヤザンの視界の端にチョロつく赤いMS達。
蚊蜻蛉のように群れ、そして新型の助成を受けてアビゴルを猛追してくるのは厄介だった。
だが、ヤザンも…そして追うゾロアットのパイロット達も思いがけぬ事が次の瞬間に起こる。
――リィィィ、リィン
鈴の音を撒き散らしながら、
背負う雷鼓から雷槌を雨のようにバラ撒けば
アビゴルを追わんとしていたゾロアット達までが雷のようなビームに貫かれて四散したのだ。
「味方ごと撃った…!ベスパはこんなイ・カ・レ・ばかりか!?」
ヤザンが忌々しいというような声を上げ、ペギーも嫌悪をはっきり浮かべた顔となる。
戦場で見境なく暴れる狂犬のように言われる事もあるヤザンだが、
彼には彼なりのポリシーがある。
無抵抗の民間人や、良識ある味方を攻撃する事はしない。
だが急速に迫りつつある新型は一切の躊躇を見せなかった。
これはヤザンから見ても異常な事だった。
迫る新型MSの中で女がケタケタと笑っている。
「ふふふふ、ははははは、あははははは!
見つけた、見ぃつけた…ここにいた…ケダモノがここにいた…あはは、ふふふ…。
ダメだよ、そいつは。私の獲物なんだからねぇ」
鈴を至る所につけた女が笑い、
その度に鈴が揺れてリィン、リィンと不気味なぐらいに澄んだ音色がそこら中に響く。
不思議なことにその音色はコクピットを越え、MSの装甲を越え、宇宙の真空に鳴り響いた。
女のその瞳にはおよそ正気とも思えぬ光が爛々と輝いていたのだった。
「タシロも気が利く男じゃないか。
試作品ゲンガオゾの履き心地を野獣で試してイイダなんて…
ンフ、フフ、フ、太っ腹なのは嫌いじゃないよ」
アビゴルの熱源センサーが追うのもやっとの猛烈なスピードを落とすこと無く、
そして直角かと思える程の鋭角の急カーブを繰り返してどんどんアビゴルへと距離を詰める。
鈴の女…かつてファラ・グリフォンだった女が叫ぶように大笑いをすると、
プロト・ゲンガオゾがそれに応えて三つの眼を開眼し再び激しく雷鼓を打ち鳴らした。
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