宇宙の魔獣・カイラスギリー その4
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「わははは!見ろ、我が軍優勢!いやぁ実に手に汗握る戦いだ!なぁ諸君!」
作戦開始当初は青い顔でビクビクしていた狸は、
今ではふくよかなお腹を張って艦長席にふんぞり返っている。
立派に狸の置物をやっていた。
非常に分かりやすい手のひら返しに、
ゴメスを筆頭に艦橋クルーは皆「仕方のない…」という
在る種の温かみある視線を投げかけている。
だが、狸のおっさんの反応は戦況の推移の目安にもなっていた。
彼がふんぞり返っているという事は自軍有利という証拠だ。
意外と戦場の気勢を感じ取るセンスはあるのかもしれない。
ゴメスはまだ顔に緊張感を浮かべているが、
体の力をやや抜いて密かに溜息などついて緊張を若干解す。
「よぉし、このまま足並み揃えて撃ち続けろ!
敵は後退しつつあるぞ!」
クラップ達のメガ粒子砲が、弾幕の薄くなったカリスト級に徐々に突き刺さり始めている。
遠方カメラがカリストの砲台が消し飛んだのを捉えてクルー達から歓声が上がる。
(いける…カイラスギリーを落とせるぞ)
ゴメスも、そしてオイ・ニュングもそう希望を抱き始めた時に、
その戦域全体にいる者達は全員妙な違和感を感じ始めていた。
戦場の景色が変わってきている。
勿論、戦局が変われば景色も変わるのだが、
もっと大きな戦場の背景が違ってきている気がするのだ。
「ん?」と小さな声を漏らし、ゴメスはオイ・ニュングへ尋ねた。
「妙じゃありませんか、伯爵」
「……ゴメス艦長も感じるか」
「ええ、何をどう、と言われると良く分からんのですが」
ゴメスに言われオイ・ニュングが要塞を拡大表示するモニターをジッと見ていた時である。
背後の艦橋出入り口で喚く声が聞こえてきた。
クルーが、無理やり入ってこようとする誰かを止めていた。
「ちょ、ちょっとダメだよ!今は戦闘中なんだ!早く部屋に戻って!」
制止されてているのは小柄で素朴な少女であった。
背負う赤ん坊、カルルマンの場違いな泣き声が艦橋に響く。
「お願い!ウッソに、ウッソに知らせて下さい!」
シャクティの必死な声も響いていた。
艦橋スタッフは怒ったり窘めたりで彼女を抑えているが、
シャクティの側では子供の心を持った赤髪の大のオトナが
姉≠ニ一緒に騒いでいるから余計に面倒事となっていた。
「姉さんが入りたがってるんだから入れてよ!子供の可愛いわがままじゃないか!」
「お前は子供じゃないだろ!?」
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