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ヤザン・リガミリティア
宇宙の魔獣・カイラスギリー その4
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「っっ!こ、こいつは…!頭の中はずっとそんな事ばっかりなの!?」

 

ヤザン流のジョークに頬を赤らめると同時にシャッコーの操作も甘くなる。

その隙にアビゴルはシャッコーを力任せに振りほどくと、

そのままの勢いでヴィクトリーへとシャッコーを投げつけた。

 

「っ!ちょっと!!」

 

「ダメですよ、カテジナさん!急がないとビッグキャノンを止められませんよ!」

 

アビゴルからしっかりとシャッコーを受け取ったヴィクトリー。

しっかりとシャッコーの抑えながら無理やりにブースターを吹かせ連れて行く。

 

「ウッソ!?離して…!」

 

「ここで駄々をこねたって時間が無くなるだけです!

ペギーさんだけじゃなくヤザンさんだって危なくなるでしょう!?

今の僕らは足手まといで、だから補給しなきゃでしょ!」

 

「っ、…く!」

 

シャッコーを投げると同時に飛んでいたアビゴルは、

既にスラスター光をみるみる小さくして去っていってしまう。

カテジナはその後姿を苦々しく眺め、肉感的で瑞々しい唇を深く噛む。

ヤザンが自分以外の女の為に命を掛けるなどという事を考えると、

それだけで実に不愉快な感覚に脳が襲われるのだ。

だが、カテジナとてこれ以上の足掻きは本当にわがまま≠セと自分で分かる。

 

「…帰投する!ついてきなさい、ウッソ!」

 

怒鳴るように言ったカテジナの剣幕が機体越しに見えるようだった。

いや、実際に見えたのかもしれない。

ウッソとはそういうニュータイプ的な少年であるからそうなのだろう。

素直にヤザンの言葉に従いだしたカテジナを見、ウッソは押し黙る。

シャッコーがリーンホース方面へ飛び出したのを見るとそのまま彼女に付き従うのだった。

 

(ヤザンさん…ペギーさんを連れて帰ってきて下さいよ。もし帰ってこなかったら…)

 

――帰ってこなかったら、僕はどうなるんだ?

こんなにヤザンさんの事が好きなカテジナさんはどうなってしまうんだ?――

 

少年は、今までとても想像もしなかった…

出来なかったあの頼もしく逞し過ぎる上官の死という未来に、かつてない恐怖を抱いた。

その恐怖は、目の前で憎悪の力を無尽蔵に溜め込む怪物カイラスギリーが与えてくるものよりも尚大きい恐怖だった。

 

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