暁 〜小説投稿サイト〜
ヤザン・リガミリティア
宇宙の魔獣・カイラスギリー その4
[2/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
今の状態での発射は冷却機能にも問題があり、砲身に負担が――」

 

そう言ったのは技術士官の男だったが、しかしタシロはもう決断しており決意は変わらない。

 

「今使わずにいつ使うのだ。

このままではリガ・ミリティアがここまで来る…。

来るのを待ってカイラスギリーをプレゼントしてやれとでも言うのかね、君は?」

 

タシロに尚も意見する者…というよりは確認をする者がまだいる。

真新しい少佐の階級章を付けた士官、ゲトル・デプレであった。

やや垂れ目な見た目と、喋り方からも厭味ったらしい男と思われがちだが、

実際厭味な男でタシロ艦隊の者達からも評判はいまいちであるが

タシロは今ではこの男を副官として置いていた。

ゲトルは声のトーンを落とし、タシロの耳にだけ入るように注意し尋ねる。

 

「タシロ大佐、しかし今この状況でカイラスギリーを使うのは味方諸共になりますが」

 

「前衛がいるうちに使わねばリガ・ミリティアが要塞に取り付くのだから仕方あるまい。

そうなっては取り返しがつかん。カイラスギリーならば本国アメリアすら狙えるのだぞ?

女王の御身を危険に晒すわけにはいかぬよ」

 

それ本国狙いをするつもりだったタシロが言うから、その言葉には重みがある。

それにザンスカールは女王マリアに心酔する新興宗教国家であるから、

女王の為…と言われてしまえばどのような非道行為も正当化されてしまう。

ゲトルの垂れ目も一段細くなって上官の目を見返した。

 

「…よろしいのですか?」

 

「致し方ないと言っている。カイラスギリーが陥落するよりはマシである。

…が、撃つ時には味方前衛は照準からずらすよ。…当然だろう?

ずらしはするが、きっとリガ・ミリティアの妨害があるだろうからどうなるかは分からんがなぁ」

 

「大佐、それは…」

 

「ここは戦場だよ、少佐。不幸は起きるし、不幸は敵のせいだ…だろう?」

 

タシロの目はどこまでも酷薄だった。

しかしその目を見てもゲトル・デプレの心は動かされない。

自分は切り捨てる側にいると思うだけで、彼の心は随分と楽になっていた。

 

(出世とはそういうものですからな。そうでしょう?ファラ中佐)

 

切り捨てられる側の末路の恐ろしさだけは、

己で体験したくないとゲトル・デプレは心底思うのだった。

 

 

 

――

 



 

 

 

MS戦で有利に立っている。

艦隊戦でも押し始めていて、どうやら勝てるかもしれないと偽ジャハナムは思う。

 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ