宇宙の魔獣・カイラスギリー その4
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今の状態での発射は冷却機能にも問題があり、砲身に負担が――」
そう言ったのは技術士官の男だったが、しかしタシロはもう決断しており決意は変わらない。
「今使わずにいつ使うのだ。
このままではリガ・ミリティアがここまで来る…。
来るのを待ってカイラスギリーをプレゼントしてやれとでも言うのかね、君は?」
タシロに尚も意見する者…というよりは確認をする者がまだいる。
真新しい少佐の階級章を付けた士官、ゲトル・デプレであった。
やや垂れ目な見た目と、喋り方からも厭味ったらしい男と思われがちだが、
実際厭味な男でタシロ艦隊の者達からも評判はいまいちであるが
タシロは今ではこの男を副官として置いていた。
ゲトルは声のトーンを落とし、タシロの耳にだけ入るように注意し尋ねる。
「タシロ大佐、しかし今この状況でカイラスギリーを使うのは味方諸共になりますが」
「前衛がいるうちに使わねばリガ・ミリティアが要塞に取り付くのだから仕方あるまい。
そうなっては取り返しがつかん。カイラスギリーならば本国アメリアすら狙えるのだぞ?
女王の御身を危険に晒すわけにはいかぬよ」
それ本国狙いをするつもりだったタシロが言うから、その言葉には重みがある。
それにザンスカールは女王マリアに心酔する新興宗教国家であるから、
女王の為…と言われてしまえばどのような非道行為も正当化されてしまう。
ゲトルの垂れ目も一段細くなって上官の目を見返した。
「…よろしいのですか?」
「致し方ないと言っている。カイラスギリーが陥落するよりはマシである。
…が、撃つ時には味方前衛は照準からずらすよ。…当然だろう?
ずらしはするが、きっとリガ・ミリティアの妨害があるだろうからどうなるかは分からんがなぁ」
「大佐、それは…」
「ここは戦場だよ、少佐。不幸は起きるし、不幸は敵のせいだ…だろう?」
タシロの目はどこまでも酷薄だった。
しかしその目を見てもゲトル・デプレの心は動かされない。
自分は切り捨てる側にいると思うだけで、彼の心は随分と楽になっていた。
(出世とはそういうものですからな。そうでしょう?ファラ中佐)
切り捨てられる側の末路の恐ろしさだけは、
己で体験したくないとゲトル・デプレは心底思うのだった。
――
―
MS戦で有利に立っている。
艦隊戦でも押し始めていて、どうやら勝てるかもしれないと偽ジャハナムは思う。
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