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ヤザン・リガミリティア
宇宙の魔獣・カイラスギリー その1
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偽ジャハナムにまた声をかける。

 

「皆あんたを実は頼りにしているんだよ、将軍!

いつも元気一杯で偉そうにふんぞり返るあんたの姿は、結構皆好いとるんだ!

しっかりしてくれ。皆が不安になってしまう」

 

「う…そ、そうかな?」

 

「そうだよ!さぁ胸を張って!」

 

「…う、うむ。こ、こんな感じか?」

 

狸の置物が垂れたお腹を伸ばして胸を張った。

いつもなら目障りなその光景も、少し滑稽な彼の姿は戦いの緊張感を和らげてくれる。

ネス・ハッシャーが笑ってヤジを飛ばす。

 

「そうそう!そんな感じ!いつもみたいに無駄に偉そうにして!ほらぁ!」

 

その言葉に他のクルーも思わず笑ってしまっていた。

偽ジャハナムが赤い顔になってネスへ怒鳴る。

 

「無駄に偉そうだぁ!?な、なんだとー!」

 

「さっきまで青い顔だったのに今度は赤くなってる!」

 

またクルー達から笑いが漏れた。

「コイツぅ!」と偽ジャハナムが腰を浮かせて怒った時、また至近弾の衝撃が艦を揺らすと、

彼は転びそうになって悲鳴を上げて肘掛けにしがみついていた。

ゴメスも大口を開けて豪快に笑う。

 

「ははははは!しっかり座っていて下さいよ将軍!

これからもっと激しくなるんだからなぁ!」

 

ゴメスの一言で皆から笑顔は消え、

そしてまた引き締まった表情で皆がコンソールを叩き出す。

 

(…しかし、あの狸の置物も…実は無いよりはマシなのかもしれねぇな)

 

褌を締め直すには良い切っ掛けだったし、皆の気力も見ようによっては再補充されている。

無精髭を擦りながらゴメスはそう考える。

切っ掛けをくれたもう一人の男、伯爵を見てゴメスは頷くように軽く頭を下げた。

 

「狸の置物を化かしてくれましたね、伯爵。感謝しますよ」

 

「あの男も悪い男じゃないんだ。役に立とうという一生懸命さはある」

 

「そのようで。だからああいう全力のリアクションが出て、なかなか励まされます」

 

ゴメスとオイ・ニュングは互いの目を見て頷いた。

カイラスギリー戦はまだまだ始まったばかりである。

 


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