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ヤザン・リガミリティア
誰が為に獣達は笑う
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彼の描く未来図の中ではザンスカールの女王すらも彼の掌中の珠となる予定である。

そしてあの独り身の女王を…

独り寂しく褥を濡らしている熟れた美女を慰めてやりたいものだと彼は思う。

 

「リガ・ミリティアもフォンセ・カガチも、そろそろ御退場願いたいものだが」

 

政治的には強大過ぎる壁として立ちはだかる、老獪な怪人フォンセ・カガチ。

だがここでリガ・ミリティアを潰せば、

軍事的にはザンスカールの英雄ムッターマ・ズガンと並ぶことが出来る。

名さえ売れてしまえば反乱に同調する兵も増加するし、

本国から合流した増援部隊もそのままこちらの戦力に組み込む自信が彼にはある。

 

軍事力さえ握れば政治家であり思想家でしかないカガチは自分には勝てない。

それがタシロ・ヴァゴの青写真であった。

タシロは既にズガンとカガチ、そして女王マリアしか視ていない。

足元に迫りくるリガ・ミリティア等、路傍の石程度にしか視ていなかったのだ。

 

しかしそれも仕方がないのかもしれない。

この時点でタシロ個人が掌握する戦力はかなり強大なものになっている。

本国からのコンティオ戦隊とその分個艦隊。

地上から撤収してきたベスパ地上軍も一部受け入れてタシロ艦隊へと編成し直している。

カイラスギリーとてあと数日で完成であるし、

サイコ研も、例の博士を筆頭にかなりの数をタシロ派に転向させる事に成功していた。

サイコ研が誇るハイエンドMSも既にタシロ艦隊に提供させる事を確約させている。

タシロ・ヴァゴが野心と万能感を増大させるのも致し方無い事だった。

あ・の・ファラ・グリフォンも掌中に収めた事も、彼を増長させるのに大きく買っていた。

タシロ・ヴァゴは我が世の春が間近に迫っているのだと微塵も疑っていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

「話があるのだけど」

 

カテジナが長い金髪を掻き上げながら、ベンチに座ってドリンクを飲むヤザンへ言った。

その男は、金髪のオールバックでありながら

タシロのヘアーのそれとは全く印象の異なる凶相で女を見上げた。

 

「なんだ」

 

「出撃まで後30分ってとこよね」

 

「今度の戦闘は規模がデカくなるぞォ。クク…ジブラルタル以上になるかもな」

 

何とも楽しそうに笑うヤザン。

人の生き死にが懸かっていようが、

それが戦闘技術を磨きあった兵士同士でヤり合うならスポーツと同じ…。

ヤザンは常々そう思っている。


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