誰が為に獣達は笑う
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点で、しかも互いの出世は互いの邪魔にならない他分野である。
だからタシロと博士はこのような軽口を叩き合う仲――気軽に言い合う冗談が、悪質なものであるので見てて気持ちの良い友情ではないが――であった。
互いの野心と人格が噛み合うからこそ、
彼らは共犯となって本国に内緒で色々なイタズラ≠ノも精を出している。
「ピピニーデンだけではな。地上での醜態を見れば怪しいものだ。
私にはファラが必要なのだよ、博士」
『焦って調整不十分での出撃は損失となります、閣下』
「実戦に出せぬレベルなのかね」
『ファラ中佐の安定性にはまだ若干の懸念材料があります。
それとZMT-S29のサイコミュ・ソナー・システムとの同期にも課題が残っていますが、
それは補助機器でサポート出来ればと思っています。
例えば、見た目を彼女の精神と相性の良い物を使うと強化深度が高まるのではと…。
本人の趣味嗜好、人格や、人格形成までの諸事情…
家族との事、家柄、印象的であったり強烈である経験等ですな。
中佐は処刑人の家系ですから例えばグリフォン家の象徴である鈴です。
そういう手法は強化安定に繋がると、
過去にはあのフラナガン機関やオーガスタ研でも実績があるのですよ。
他にも、ファラ中佐にはご執心だった恋人がいたそうですから、
その者に似ている人物を側に置くのも安定性向上には良いかもしれません。
サイコ研の被検体の一人に整形と刷り込みで仕立て上げて―――』
「――あ〜、………分かった。良い仕事を期待しているよ、博士」
長くなりそうな口上にタシロの眉が歪む。
やや間を置いて溜息を吐き出すのと同時にそう言って、さっさと通信を終えた。
気を取り直すようにタイを緩め、高級な卓の引き出しから手鏡を取り出す。
オールバックに塗り固めた黒々とした髪に櫛をいれた。
その、ねとりとした仕草と手鏡を見つめる視線からは彼のナルシストな性分が存分に見える。
そして強固な自意識も。
「ふふ…リガ・ミリティアか。愚かな連中だよ。
私・の・カイラスギリーの周りを蚊トンボのようにちょろつくに飽き足らず挑むだと?」
デブリ宙域に潜んでいるバグレ艦隊の動きには常に気を配っている。
だからタシロはその動きから彼らが決戦を望んでいる事を察していた。
「この要塞に正面から挑もうという気概だけは買うがな」
不敵に笑い櫛をしまう。
タシロ艦隊に敵は無いのだ。
いるとすれば…。
「ズガン艦隊…か」
今後の展望を思い再び笑う。
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