獣の安息 その4
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「ああいう光景を俺たちは守るんだ」
「ええ」
「子供って、いいよな」
「そうね。……なに?欲しいの?」
「え?」
パートナーから向けられた悪戯染みた笑顔に、オリファーの鼻っ面が少し赤くなっていた。
そしてシュラク隊の女性陣も、思うことは似たようなものだ。
いつ死ぬか分からぬ戦乱の世。
そして、最前線で戦い続ける精鋭部隊。
性の価値観は時代ごとに変遷するが、
今の世、女達の多くは男と愛し合い子を生むことを望む。
それは、きっとそう思わなければ人類はすぐに死滅してしまうからだ。
それぐらいのペースで人類は太陽圏中で殺し合いをしている。
人類の本能が絶滅を防ぐために愛し合わせているのだとしても、
それは素晴らしい事と思える。
「あー、私も子供ほしー」
ヘレンがつくづく、といった感じでボヤいた。
「戦争中にあたしらが妊婦になったらリガ・ミリティアの根幹が揺らぐわよ?」
ジュンコ・ジェンコが働く手を止めずに、相棒的パイロットへ相槌を打った。
笑ってケイトもそれに参戦する。
「あはは、そうだよね。
このタイミングでみんなが子作りしたら数カ月後にはシュラク隊は解散だわね」
「でも欲しいったら欲しぃ〜!あんなの見てたらそう思っちゃうだろ!?ケイトもさぁ」
「はぁいはい。じゃあヤザン隊長パパにおねだりしてみなよ」
首をすくめてジェンコが言うと、ヘレンも悪巧みの笑顔を浮かべる。
「…ねぇ、ジュンコ。今夜あたしと一緒に仕掛けようよ」
「はぁ?」
「でさ…クスリすりかえて…穴も開けてさ…」
「バァカ!仕事しな!」
友人の頭をぽかりと叩いて、
笑っている他の同僚達にも発破をかけて猥談になりかけていた雑談を締める。
年端も行かぬ子供らが近くにいるのだから、
あまりこういう話題で盛り上がるのもどうかとジュンコ・ジェンコは思うのだ。
しかし…。
(子供か…そうだよね。私達にも、今は希望があるんだ)
戦況は思ったよりも好転している。
そして、多少…一人の男を共有するという倫理的な問題があるが、
シュラク隊には夜のパートナーを兼任してくれる群れのリーダー強いオスがいる。
(マーベットだけが、母親になれる可能性を持っているわけじゃない。
私達も…私だって………――ヤザン隊長との子供、か)
戦争で次々に命が消えていく。
だから、
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