ハイランドと野獣
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…という優越感も少なからずあるのは確かだ。
自分の力じゃ何もできないお嬢様に思われたくはない。
だが、掃き溜めで彷徨く生まれ卑しい者達とも違う。
カテジナの心にはいつも複雑な感情が渦巻いているのだ。
ヤザンに対する感情もそうだ。
「ねぇねぇ」
「…何よ。今はシノーペの操艦中なの。余り喋り掛けないで。
あなたも宇宙で遭難したくないでしょう?」
「大丈夫よ。シノーペの操縦なんて私でも出来るんだから。
それに、外からあの…おっかない人がMSで引っ張ってるんでしょ?」
「…ふふっ、おっかない…そうね。それは当っているわ」
笑ったカテジナのその柔らかな表情を見て、
話しかけていた少女…マルチナ・クランスキーも少し微笑んだ。
姉のエリシャ・クランスキー(15歳)と年が近そうに見えて、積極的にカテジナと接している。
「お姉さん、美人なのにあんな怖い人を恋人にするの止めた方がいいわよ」
「っ」
カテジナは思わず操縦桿を明後日の方向に倒しそうだった。
「こ、恋人じゃないわ」
「そうなの?でも、すごく仲良さそうだったけれど」
「なんで私があんな奴」
「…」
利発な美少女は、やや吃りながら否定した金髪の美女の様子を見てニヤッと笑った。
「お姉さん、あんなおじさんの事が好きなんだぁ〜」
「なっ!」
「きゃっ!?」
シノーペがやや傾いた。
マルチナが驚き、背後の客席では少年二人が「うわぁ」と叫ぶ。
そして、当然のように上方からシノーペを抱えて宇宙を泳いでいたアビゴルから叱責が来た。
「カテジナァ!なにをやっている!貴様はブースターだけ管理すれば良いと言っただろう!」
「わ、分かってます!」
「分かっているなら何故操縦桿を倒した!」
「…すみません」
「しっかりせぃ!!」
カテジナは頭を抱える。
(そうよ…今は触れ合い通信で、こちらの会話は丸聞こえじゃない…!)
つまり年少の少女に指摘され、動揺した先程の事も筒抜けなのだ。
野獣が、悪辣な笑顔を浮かべてこちらを見ている気がした。
カテジナは、己の頬が熱を持つのを自覚していた。
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