ハイランドと野獣
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」
「なに?」
「代われ。シャッコーをシノーペにドッキングさせてガキ共の御守をしな」
「なんで私が子供の相手なんて!」
「アビゴルのパワーならシノーペごと引っ張れる。その方が速くハイランドに着くだろうが」
「それ、言い訳でしょう!」
「……任せたぞ」
「あっ、ちょ――」
通信を切る。
ヤザンは子供らに一瞥もくれること無くシノーペを飛び出して、さっさとアビゴルへ戻る。
一連の動きは無駄なく素早かった。
数分後、シノーペ内には
仏頂面で子供らの面倒を見るカテジナの姿があったのは言うまでもない。
カテジナは子供が好きではない。
無知を顔に貼り付けて歩いている癖に、妙に小賢しく大人に意見する。
図々しく、他人の領域に入ってくる。
赤ん坊などは、独りで何もできない癖に泣けば全て許される。
泣くのが仕事だと言う者すらいる。 ――赤ん坊なのだから当たり前だとは彼女も理性で分かってはいるが――
だが、カテジナ・ルースという女はまだ少女と呼ばれる年齢で17歳。
彼女自身、子供と大人の狭間を漂う難しい年頃なのだ。
カレル・マサリクの兄で…
この場にはいないが、ハイランド衛星の少年トマーシュ・マサリクと同い年。
まだ子供と言ってもおかしくはない。
そう考えると、カテジナの子供嫌いは
自分の中の子供的なものが嫌い≠ニいう同属嫌悪に近い感性なのかもしれない。
「…お姉さん、地球人なの?」
「え?」
難しい顔でシノーペのパイロット席に座っていたカテジナに、背後から少女が話しかけてくる。
話しかけて来たのは、人質の子らの中で一番の年長と思われる少女。
青みがかった髪を短いサイドテールにした娘で、美少女と呼んで差し支えない容姿だ。
カテジナは愛想笑いを浮かべて応えた。
「そうよ。地球生まれの地球育ち」
「へぇ〜、今どき珍しいのね」
「…そうかもね」
カテジナの一瞬の間には色々な感情がある。
今どき地球育ちというのは、つまり連邦の高官と繋がりを持てるエリート層だ。
だが、スペースノイドに羨まれるエリート≠ニいうのはもはや数十年前も昔の感覚。
今では殆どのスペースノイドが地球育ちを羨まない。
時代に取り残されたエリート。
それが現代の地球生まれなのだ。
カテジナは、まるで自分がエリートお嬢様ぶっているようで地球生まれの肩書きを名乗りたく無かった。
しかし彼女の心の中には、自分はエリートなのだ
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