野獣好きのバグレ
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、俺はこいつと一服しているのだが…
まだ貴様のトークに付き合わにゃならんのか?」
「いえ、そ、そうでした。すみませんヤザン総隊長。
その、サインをいただけませんかっ」
堅物そうな女軍人がやや照れながら懇願してきて、
凶悪さに拍車をかけているヤザンの細い目が大きく開き、
思わずヤザンは口に含んだドリンクを吹き出しそうになった。
「サインだぁ!?貴様…俺が歌手か何かに見えるのか?」
二人を観察しているウッソも笑いを堪えているように見えないでもない。
自分で歌手と言っておいて何だが、ヤザンはかつてアレキサンドリア艦長ガディが
「ヤザンの改造制服はまるで歌手」と言っていた…と
当時の部下ダンケルとラムサスが大笑いしながら自分に報告に来たのを思い出す。
だがユカ・マイラスは当然そんな風に見ていたのではない。
「ち、違います。純粋にヤザン総隊長をパイロットとして皆尊敬しているんです。
仲間に頼まれてしまって…その…恥ずかしながら私も、私にも下さい!」
大量の色紙を差し出しながら頭を下げたユカ。
ヤザンの片眉とウッソの口が弧を描く。
ヤザンはジロリとウッソを見咎め、少年は慌てて口を塞いでいた。
「バカか貴様らは!腑抜けているようだな!…この後は合同訓練か。
俺が叩き直してやる!」
「ハッ!あ、ありがとうございます!総隊長直々のご指導、感謝いたします!」
ユカはパブロフの犬ばりの反射反応で敬礼をする。
「もう行け。さっさと貴様のお仲間共にも伝えろ!」
シッシッと追い払うようなジェスチャーで掌を1回振るうヤザンに
ユカはまたぴしりと決まった敬礼を返せば、
色紙の束を小脇に抱えて駆け足で去ろうとして
「おい、それを貸せ」
「え?」
ユカから1枚、色紙を奪い取ると極めて適当にサラサラとマジックペンを走らせた。
ユカの顔が花開く。
「あっ、ありがとうございますっ!」
「フン…1枚だけだ。後はかってにコピーでもしろ」
つっけんどんなヤザンを、少年が生暖かい目で背後から見ていたのだった。
この後の合同訓練でバグレ隊はヤザンのアビゴルに滅多打ちにされるが、
バグレ隊の面々はとても嬉しそうだったのをウッソは知っている。
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