宇宙の暗がりで企む獣
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は冴えない。
美女の薄暗い薄幸の顔はタシロの欲情を誘うものだが、
今はまだその時ではないとタシロは滾りそうになる股間のものをグッと抑える。
「そうだろう?最後の食事だ…楽しむと良い」
「っ!」
タシロの言葉が暗に語るものにファラは一瞬目を大きくさせて言葉を失った。
「ぐ、軍法会議で…どのような判決が出ようとも私は受け入れ――」
正当な場で正当な判決を。
そうファラは言いたいが、喉と舌はこみ上げてくる恐怖で震えて上手く紡げない。
「会議?…そのようなもの必要ない。私が軍法会議だ」
「………っ」
俯いたファラの手は更に大きく震えてしまって、
中佐にまで昇り詰めた気の強い才女の怯えはもうとても隠せていない。
「ファラ中佐。君は漂流刑だ。
見届人は、そうだな……君と付き合いの長いゲトル少・佐・にやらせるよ。
少しでも見知った者の方が君も安心だろう?」
「しょ、少佐…?」
「そうだ。君の尻ぬぐいで、彼は頑張ってくれたからな。
君の後任となってこれから色々動いてもらう」
これが理不尽というやつか、とファラは怯える心を塗りつぶすような怒りが湧いてくるが、
それも一瞬の事ですぐに萎えて怒りの炎は頼りなく吹き消えた。
もはや何もかもどうでもいい。
そう諦観したいのに、しかし広大過ぎる宇宙に独り放り投げられる恐怖を思うと、
どうしても死の恐怖が自分を襲ってきた。
メッチェの元に行きたい。
だが、それにしても方法はこのように無慈悲な物でなくとも良い筈だ。
即死を与えるギロチンの刃は、
実はとても慈悲があるものなのだとギロチンの家系の彼女は熟知していた。
それをショーに使うガチ党が悪いのであって、
ギロチンの家系は慈悲の家系なのだ。
その理論が、ファラ・グリフォンの…血塗られた己の血筋を肯定するせめてもの救いだった。
コロニーの広場で民衆の見世物になっても良い。
最後はギロチンの刃で一瞬で死にたいという願いは、
眼前の男タシロ・ヴァゴによって容易く打ち砕かれた。
「ゲトル大・尉・は、条約違反をしジブラルタルを独断で占領しようとした男です!
あまり大権をお与えになるのは如何なものかと思います」
「………少佐だよ、ファラ。
それにおかしなことを言う。ジブラルタルの無断占拠は君の独断だよ。
君の責任なのだ…女王の弟を死なせたのも、欧州戦線で停滞を続けたのも、
永世中立の約定を違えて帝国の権威を失墜させたのも全て君のせいだ
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