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ヤザン・リガミリティア
宇宙に帰ってきた獣
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「カテジナ!まずは自分の場所を把握しろ!

マシーンに頼りすぎるな!自分の感覚で位置を掴め!」

 

「…ッ!ぐ…う、うゥ…!!」

 

カテジナが駆るガンイージに衝撃が走る度、

ガンイージは錐揉み回転となってカテジナの平衡感覚を揺さぶった。

コクピットの耐G機能とショックアブソーバーがかなりパイロットを楽にしてくれている。

その筈なのに、嵐のように絶え間なく素早く動くモニターの星景色が彼女の視神経を侵し、

吸い消し切れぬ衝撃が耳石を微かに間断なく揺らして猛烈な吐き気を催させる。

 

「太陽を意識しろと言うんだ!」

 

ヤザンの声が通信機越しに聞こえ、直後にまたガンイージが揺れた。

ヤザンにMS越しに殴る蹴るの嵐を見舞われ続けて早くも2時間は経っている。

ヤザンは最初に言った通り容赦がない。

箱入りのお嬢様を戦場で使える兵士に

数日以内にはしてみせようという無茶をヤザンは本気でする気であった。

とにかく時間が無い。

いつザンスカール艦隊と戦闘をするかはベテランのヤザンにも断言は出来ない。

こちらの予定はビッグキャノン攻略戦であるが、

ザンスカールの増援艦隊と遭遇戦をする可能性や、

哨戒艇シノーペと遭遇する可能性も充分有り得る。

戦闘はいつだって唐突だ。

それこそ双方が予定通りに戦うという事態は大規模な会戦ぐらいだろうが、

それだってどんな不確定要素で早まったり遅れたり流れたりが起きるかもしれないのだ。

そういう事が起きる前までに、

ヤザンはカテジナが取り敢えずMSを意思通りに一通り動かせるようにはしておきたかった。

 

「返事はいらんぞ。口を開けば舌を噛み切る!

舌を噛み切って死ぬのはパイロットにとって最も恥ずべき事だ!覚えておけィ!」

 

そんな事を言われてもカテジナは吐かぬように耐えるのに必死で口を開く余裕もない。

ヤザンが言うことを理解しようとも脳も撹拌されてるかのような断続的衝撃の中では、

彼の言葉も脳に染み付かない。

1G環境下で迂闊に格闘戦を仕掛け核融合炉を爆発させた馬鹿者が、

その衝撃で舌を噛み切ってしまうという事故は第2期MS時代以降多発している。

第1期世代のヤザンでさえ、

まれにそういう事故が起きて死んでしまうパイロットがいたのは知っていた。

ジェネレーターが核爆発しやすい第2期の現代戦ならば

尚更考慮しなくてはならないのが噛み切り対策なのだった。

 

その事をカテジナはテキストで読んだとうっすら記憶の引き出しから引きずり出していたが、

とにかく今はそれどころではない。

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