宇宙に帰ってきた獣
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必死に機体の立て直し己の平衡感覚を無理矢理にオーバーワークさせる。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…!」
常に襲う吐き気、目前に急速に迫る巨大な鉄の拳。
だがヤザンのシゴキは少しも緩む気配が無く更に2時間が経過する。
既にシュラク隊やウッソ達は一旦リーンホースへ休息と推進剤の補給に戻っても、
ヤザンのカテジナへの個人レッスンは続いていた。
「ぅッ…ぐっ、うッ……ッッ!こ、れ、ぐら…い!」
カテジナの喉まで込み上げる不愉快な酸っぱさを、
しかしウーイッグのお嬢様は気合で飲み込んでヤザンの猛烈な殴打の中でも
機体を直ぐに立て直してシャッコーと向き合うようになってきていた。
体中のアポジを無駄に吹かしまくってはいるが
何とか立て直したガンイージを見てヤザンはほくそ笑む。
「良い筋だな、カテジナ。案外貴様は本気で化けるかもしれんぞ」
「ハァッ…ハァッ…うっ、……ハァっ、ハァっ…あ、ありがとう、ございます…!」
たった数時間の初訓練で、カテジナの動きはまぁまぁ様になってきているのだ。
これはかなり驚異的な事と言えた。
本気で「こいつ、天賦があるかもしれん」とヤザンも思い始めている。
ウッソ程ではないが――ウッソは別格の化け物であり過ぎる――
カテジナにもまた空間認識能力に特別な才の片鱗があるのをヤザンは感じていた。
(…何よりも根性がある…真の意地っ張りだぜ、こいつは)
帰ったら少しは優しくしてやろうかとも思ってヤザンが目を細めたその時…
「ん?」
「はぁ、はぁ…ど、どうしたの…ヤザン隊長?」
シャッコーの猫目が宇宙の黒い海の遥か向こうに光を捉えた気がした。
ただの星の光ではない。
不規則に明滅し、揺れ動いていた気がしたのだ。
「…いや、見間違いか?…カテジナ、あちらに何か見えるか?」
「え…?いえ、何も……あっ、待って。何か…」
ヤザンは宙域のCG処理マップを呼び出して座標を確認すると、
シャッコーの目線の先には特にコロニー等も無い。
「……ここから近い人間の痕跡は…太陽電池衛星ハイランドか…だが方向が違う。
しかしカテジナも見たのだな?」
「ええ」
「……よし、貴様の今日の訓練の仕上げといこう。
偵察に行くぞ。着いて来い」
「わかったわ」
そう返答したカテジナの声には少し上擦ったような明るいものが混じっていて、
今までの猛特訓の疲労を感じさせない明るさ
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