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ヤザン・リガミリティア
美女と野獣と少年少女
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と同時にカテジナは走り去っていた。

 

あんぐりと口を開けてその修羅場を眺めているリーンホースの新参スタッフ達。

それと対象的に平常運転のリガ・ミリティアの古参達と、そしてヤザン。

カテジナから受け取ったバッグを開けて漁り、

1枚、また1枚とバッグ一杯の書類を取り出してのんびりチェック等を始めていた。

 

「フフ…これはこれは。やる事はやっているな、お嬢様。

完璧な書類だぜ」

 

「ヤザンさん」

 

事が静まり、ウッソがようやく場に出てくるとヤザンへ静かな口調で声を掛ける。

 

「ウッソか。お前が片想いしていたウーイッグのお嬢様は随分と激しい女だな」

 

「そうさせたのはヤザンさんでしょう…?もう…」

 

ジトリとした目でヤザンを睨むように見るウッソの視線をヤザンは笑って流した。

 

「ハッハッハッハ!そうか!そいつはスマンな。

あいつの反応が素直で面白くてなァ…ついついからかっちまう」

 

「よくないと思います、そういうの」

 

ウッソ少年が、少し頬を膨らませた仏頂面気味に言う。

 

「カテジナさんは…きっと、ヤザンさんの事が…その…好き、なんじゃないんですか?

なのに他の女の人と楽しくしているのを見せつけるのは…可愛そうだと思います」

 

焦がれていた想い人が他の男を好きかもしれないと思うのは少し辛いし、

これはウッソ少年の甘酸っぱい初失恋なのかもしれないが

カテジナを盗った男がヤザンなのだと思うと

ウッソはその失恋がそこまで苦いものとは思わなかった。

ウッソの隣ではシャクティも「ウッソと同意見」と言わんばかりの視線を投げ寄越している。

彼女から見ても、カテジナの激しい態度の中にヤザンへの恋慕を感じる。

 

「……フン、賢しく言うじゃないか小僧共」

 

ヤザンは少年少女が目で訴えかけるものを読み取ろうというらしい。

笑うのを止めて真摯に向き合っていた。

 

「………」

 

「………」

 

三人の視線が言葉無く交わり、

やがてヤザンの目線は自然とシャクティの瞳に引き寄せられ吸い込まれていく。

ウッソとシャクティの目の中に、子供故の純心だろうか…ヤザンは広・が・り・を見た。

ウッソもであるが、特にシャクティだ。

黒い瞳は、まるで宇宙のように深くて広く、見つめる者を包むような優しさがあって、

その暖かさがヤザンには受け入れ難い。

寝たくもないのに寝かしつけてくる母親のようであった。

普段はおどおどしているくせに、

シャクティは只々静かに真っ直
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