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ヤザン・リガミリティア
美女と野獣と少年少女
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手で私に触らないで!

そんな…そんな、不潔な男なんてッ!」

 

「俺がどんな女を抱こうが貴様がピーチクパーチクと喚く理由になるのか?」

 

「そうよ!知ったことではないわ!ただ、私は女の敵を討ってやろうっていうのよ!」

 

「フッ、ハハハッ!女の敵か。

わざわざリガ・ミリティアに残って軍船にのこのこやって来て女の敵を殴りに来たのかよ。

さっさとリガ・ミリティアと縁を切ってウーイッグに戻ればいい。俺が嫌いならな。

そのチャンスはいくらでもあったし、ジブラルタルに俺が向かったのは勿怪の幸いだろう。

あの時に俺の面を拝まず去れる筈だった…違うか!?」

 

それに女の方から抱いてくれと言ってきたのだとヤザンが言えば、

カテジナはもう顔中を怒りで真っ赤にして襲いかかる≠ニいう表現が似合うように暴れた。

余りに力一杯暴れるものだから、彼女の手首を押さえる手にも力が入ってしまう。

カテジナの細く白い手首に、

ヤザンの手形が痣になって残ってしまうのではないかという程に。

カテジナがヤザンの面に唾を吐きかけるが、

しかしヤザンは避けずにそいつを頬で受けて女の目を見つめた。

 

「お前のような下衆はいちゃいけないのよ!

女を力で抑え込んで…!女は男の言う通り動くオモチャじゃない!」

 

「誰がお前の意思を無視して貴様を動かした?

俺はいつでも貴様の意思を尊重してやったがな、カテジナ。

リーンホースに来たのも、誰がお前に頼んだ。

お前は自分の意思でここに来たのだろう?」

 

憤激するカテジナをヤザンは愉快そうにニタついて眺めていて、

それがカテジナにはより一層気に食わない。

キスマークを指摘されて狼狽え、

頭を下げて真摯に謝るならまだ可愛げがあるとカテジナは思うが、

確かにヤザンが言う通り自分がそんなことで満足したり不満を抱いたりする道理はない。

カテジナはヤザンの彼女でもパートナーでも伴侶でもないし、

なることを望んでもいないとカテジナは自分では思っている。

そんなことは理性と知性で分かるが、

カテジナの精神の根底はまさに烈女でありマグマのように熱く煮えたぎる激しいものがある。

その魂の奥底がカァっと熱くなって怒りを拭き上げてしまうのだ。

 

ヤザンの顔を久しぶりに見た時は自然と頬が緩んだ。

足も自然と彼の方へ引き寄せられて小走りで向かっていた。

だが、首筋のキスマークを見た瞬間に、

その烈女の面の煮えたぎる炎の心が前触れもなく爆発した。

してしまった。

カテジナの令嬢としての理性が止める間も無く激発したのだ。
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