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ヤザン・リガミリティア
獣の安息 その3
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ヤザンの部屋の前まで来て、ウッソの目を見るオリファーはそのまま扉をノックした。

だが、やはりウッソの時と同じく部屋の中から反応は無かった。

 

「…おかしいな。隊長は部屋にいるはずなんだが。

シュラク隊も部屋にいないからてっきり隊長の部屋で先に………

って、なんだ。開いてるじゃないか」

 

そう言いつつオリファーは部屋に入っていく。

「あっ、や、止めたほうが――」と言いかけたウッソの制止も間に合わない。

 

数瞬の沈黙。

そして開いた扉の隙間から、よりはっきりと聞こえてくる女性の色気たっぷりの声。

オリファーは「鍵をしておいて下さいよ!」と叫びつつ走って飛び出てきた。

 

「……ウッソ」

 

「は、はい」

 

「お前、まだあんなの聞くのは早い!

ああいうのは1人を相手にして、愛し合った上での行為であってだな!

あんな複数を相手に、ましてや美人揃いのシュラク隊相手に

ベッドでも蹴散らすなんてのはさすがヤザン隊長だというもので…!

って、いやいや、違う。そうじゃない!

あー……その…とにかく、い、今は帰ろう。都合が悪い」

 

「そ、そうみたいですね」

 

さすがのオリファーも嫌な汗をかいていた。

メガネを掛け直し泳いだ目を隠してウッソの頭を軽く小突いた。

 

「いて」

 

「おい、ウッソ」

 

「な、なんですか」

 

「あんなのは普通じゃないんだからな?

もっと普通の恋愛を、お前はしろよ」

 

「わ、わかってますよ!」

 

「あと、興味があるのは分かるが…あんなのはシャクティに嫌われるぞ」

 

「しませんって!

オ、オリファーさんこそ、マーベットさんがいるのにあんな事したらダメですよ!」

 

「バカっ!す、するわけないだろう!」

 

したくても出来ないよ、と言いかけた言葉を飲み込んで

オリファーはウッソの手を引きヤザンの部屋から離れていく。

 

(マーベット1人だって持て余しているんだ……。それにしても…)

 

オリファーは思い返して静かに息を飲む。

引き締まりながらも女性的な丸みを持つ豊かな尻を、

髪を振り乱しながら男の腹の上で揺らしていたあられもない美女の姿を思ってしまう。

 

(ふぅ…まったく隊長はスゴイな)

 

オリファーは、その夜、マーベットと仲睦まじく過ごしたのは言うまでもない事だった。

また、ウッソ少年もその夜は幼馴染のシャクティの事を想いながら独り過ごすのであった。

 

 

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