獣の安息 その3
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えてこない。
と思いきや、ウッソの超人に片脚の先っぽを突っ込んだ身体能力は聴力も抜群で、
微かな音をその部屋から聞き取っていた。
苦しむような女性の声が微かに聞こえる。
(…?今のは…ケイトさんの声…?他にもいるの?)
聞き耳を立てて伺うウッソ。
ケイトのらしい苦悶の声が聞こえ、
他にも女性の…やはり苦しみ呻くような声が微量に耳に届く。
「…っ!こ、これって」
ハッと合点いき、ウッソはドアから飛び退いた。
顔が真っ赤になり鼓動が速くなる。
勉強家であり読書家であるウッソは色恋沙汰に関する知識も同年代より豊富だ。
ウーイッグのカテジナに恋慕し、
盗撮紛いの事までしてしまうくらいには異性への関心だって芽生えてきている。
だからヤザンの部屋から微かに響く女性の苦悶の声が、
そ・う・い・う・時・の声なのかもしれないと思考が結びついてしまった。
スペシャルだニュータイプだと言われても
思春期に入りつつある少年の好奇心は普通の人間となんら変わらない。
どきどきしつつウッソはまた、こっそりと扉に耳を当てた。
ヤザンの声が聞こえ、その直後にケイトの苦悶の声が聞こえる。
会話の内容までは分からない。
だが、荒く短い呼吸で言葉にならぬ嗚咽染みた声が聞こえる度に、
ヤザンに組み伏せられるケイトの姿を夢想してしまう。
(…あっ、い、今の…ヘレンさんの声じゃないの!?う、うわ…他にも聞こえるぞ…)
ひょっとしてシュラク隊全員と?
ウッソがごくりと唾を飲み込んだその時、
「ウッソ、どうしたんだ?盗み聞きなんて趣味が悪い」
「う、うわっ!?オリファーさん!?」
またウッソは扉から飛び退いた。
オリファーはそんな少年の様子を怪訝な顔で見ていた。
「んん?なんだ、本当に盗み聞きしていたのか?」
片眉をしかめてオリファーが言った。
彼は片腕で大きな紙袋を抱えていて、
その中をガサゴソと漁るとウッソへ何かを投げて寄越す。
「わっ」とそれを受け取ったウッソが見るとそれは天然素材のチョコレートだ。
「ヤザン隊長と酒でもと思ってな。街で買って来たんだ」
「貰っちゃっていいんですか?」
「あぁ、ついでに買っただけだしな。もうすぐオデロ達も来るから菓子も欲しがるだろ」
「あ、ありがとうございます」
「で…なんで部屋に入らず盗み聞きしてるんだ、ウッソ」
「えっ!あ、あの!それは…」
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