死にゆく獣達は守るべき女達に
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うと恐怖に強張る脳を必死に動かす。
モニターを覆っていた白い光が失せている。
間近まで迫っていたサーベルに焼ききられたのだろう…
幾つかのモニターがかすれて砂嵐となってダウンしていたが、
活きているモニターが火を拭いて墜落していくMSを捉えていた。
墜ちていくそいつは、間違いなくさっきまで己を殺そうとしていた新型だ。
右腕を肩から、右足を腿の付け根から失い黒い煙と炎を撒き散らして眼下へ消えていく。
「な、なに…なん、で…」
薄っすら涙を浮かべ体中に脂汗と冷や汗を吹き出して、
ノーマルスーツのトイレパック機能に小水まで僅かに漏らしていたケイトが呆然としていると、
かすれたモニターに飛び込んできた猫目のMSが赤い目を剥き出してこちらを見ていた。
先の新型と同じくザンスカールの複合複眼マルチセンサーを持つMS…
だが、現れたそいつはさっきのとは真逆でケイトを心底から安堵させてくれる。
「シャ、シャッコー…」
「まだ生きているか!?ケイト!」
シャッコーが、指の付け根から射出したワイヤーで
コクピットハッチが爛れたガンイージへと触れ合って言っている。
その声は、ケイトが今最も聞きたかった声だった。
「チッ…返事がない…間に合わなかったか!?クソ!」
「た、隊長…」
「ケイト!?生きているならさっさと返事をせんか!
紛らわしいんだよ、マヌケが!」
ケイトの声は震えている。
らしくもなく、吹き出てくる様々な感情で理性が乱れていた。
ヤザンの男らしい声がガンイージのコクピット内に木霊して、それがケイトには心地いい。
「さっさと降りろ!貴様のガンイージはただの的と同じだ」
「で、でも…降りると言っても…ここから飛び降りたら…。
ここって…7、80mくらいありそうなんですが…」
ケイトは体まで震わせながら、何とか震える声で答えた。
パイロットがMSの昇降に使うワイヤーガンも精々30mくらいまでが限界だ。
いくらケイトが肉体まで鍛えられたパイロットと言っても
命綱無しにマスドライバーの鉄骨を延々と登り下りする度胸はさすがに無い。
そう思っていたら、気付けばシャッコーがガンイージに胴を擦り寄せるように組み付いていた。
シャッコーのハッチが開く。
「来い!」
「えっ、あっ…は、はい!」
ケイトは慌ててガンイージから飛び出し、
目の前に腕を差し出していた凶相の男の手を取る。
グッと身体を引き寄せられた。
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